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「そうだな、せっかくだし晴と響には俺から話を通しておく。本人たちに直接話を聞いた方が早いし正確だろ」
「うっわ、弟君までいいの?!さすが会長!これで今月もまた新聞部のぶっちぎりかな、広報部の奴らの悔しむ顔が目に浮かぶわ、ひっひ」
「ああ、まあ広報部には今度生徒会の紹介を頼もうと思ってるけどな」
「ええっ新聞部を使ってくれよお、なんで広報部なんか・・・」
「情報部は基本ゴシップだろ、公式のものは広報部に任せるようにしてんだよ。んじゃ頼んだぞ」
「下世話で悪かったな・・・くそう」
***
「ンで、てめーらは何やってんだ」
ぎゃーぎゃーと室内で騒ぐ3人に怒りの鉄拳を落とす。岩村と戸際、響である。室内にはもう1人、北条がいたが、北条は静かに自分の卓上の書類をただ黙ってさばいている。それを横目で見ながらも岩村の膝の上に捕まっている響の腕を掴んでひっぺ返した。
「あー俺の毛玉・・・」
「誰がっ、誰の毛玉じゃっ」
「っと・・・俺は仕事に戻ろうかなあ、はは・・・」
「カイト、一人だけ説教から逃げようとしないの。ほら一緒に怒られようねー」
尚も俺の目の前でわちゃわちゃと騒ぐ3名に腕を組みどうしたものかと黙りこくる。4限も終わり現在は昼休みの時間である。様子を見がてら生徒会室に足を運んで見れば、案の定。先ほどの嫌な予感は多分当たっている。視界の端には机に山積みにされたままの書類がそのまま昨日となんら変わりはない様子でそこにあった。
青い顔をした戸際と楽しそうに笑う岩村。響ははらはらと落ち着かない様子でいる。
「お前ら。まさかじゃないが今日一日そうやって遊んでいたわけじゃないだろうな」
「へっ!?い、いや、そんな、まさか…まさか」
「快斗は余計なこと言わなくていいからさあ。ほら会長は俺の机の上にまとめた書類あるから確認をしてくださーい」
戸際のセリフを遮って話しだす岩村は自身のデスクを指差した。
「一枚目が先日現行犯で捕まえたレイプ未遂…被害者は相良成。調べてて気がついたけど補佐の秋くんの弟みたいだねー。諸々の手続きだとかは終わらせたから後は会長の判を貰うだけ」
すらすらとソファに腰掛けたまま説明していく岩村にふむ、と腕を組む。相良成、本当にあいつの弟だったとは。今現在は入院中である、生徒会補佐役でもある幼なじみの顔を思い浮かべる。
以前戸際が失敗したまま保留になっていたからどうしたものかと思っていたが、しかし秋の弟となれば俺にとってはまた話が変わってくる問題だ。
とりあえず確認をするために岩村のデスクの上にまとめられた書類に目を通す。
流し見ではあるが確かに必要事項と事の詳細が綺麗にまとめられていて、あと必要なのは生徒会長の受領印だけである。これに判を押せばその後はファイルされて生徒会での仕事はおしまいだ。
書類自体にいちゃもんをつける気はない。被害者のクラスを一度確認してから、判を押すために書類を自分の机の上に移動させた。
「もう一つはメグルが被害者の未遂事件ね。これもまとめてあるから判をもらえれば終わり、…その場で加害者と仲直りするやつ初めて見たよ」
「まったく。飛んだ物好きもいたもんだな」
「は、はは…でも今は友だちなんで…」
「レイプ犯と友だちになるってどんな神経してんだお前は。加害者は、御手洗?…聞いたことあるな。」
「佐藤マサムネ。会長のお友だちの後輩だね」
ああ、あいつの。妙に納得して、これも本人がいいと言っているのなら判子を押してファイルして終わりだと自分の机の上に移動させる。
そうか、御手洗は雅宗の後輩か。書類に貼り付けられた御手洗の顔写真に若干の違和感を感じるもあまり気にせず、自身の席に腰を下ろした。
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