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「それで、結局なんだって言うんだ。まさか戸際と喧嘩しに来たわけじゃないだろ?」

「説明は僕からしますよ。実は巡流を生徒会補佐にしてみてはどうかと思って」

「生徒会補佐?・・・こいつを?」

北条の「巡流」呼びにまず顔を顰め、さらに補佐という単語につい不機嫌な声が漏れた。
北条はいたって冷静に、実は先日の件から僕らでもいろいろ考えてみまして、と説明を始める。どうやら冗談ではないらしい。
岩村はソファに身体を預けてスマホに落とした視線をあげることはない。響はじっと俺を見つめ、戸際はさっきの宣言通り不服そうな顔をしていた。


「……悪いが、補佐は二人もいらねえ」

「相良くんのことですか?」

「そうだ」

呆れたような北条の顔に、眉間にしわがよる。
いまはここにいない生徒会補佐とは相良秋という男だった。もともと体の弱い男だった。去年の暮に体調を崩したかと思うとあっという間に入院。年が明けて、新年度が始まった今でも秋は学校に来られていない。

「……確かに、相良くんはよく働いてくれます。学園にいる間はね」

「北条、その言い方だと嫌味に聞こえる。気をつけろ」

「ええ、そうでしょうね。嫌味を言ったつもりですので」

「……お前」

低く唸るように北条を睨み付けた。
北条は怯むでもなく、かといって逆上するでもなく淡々と感情を殺した表情で俺を見つめ返すのみである。

「あの、先輩。……一応、まだこいつ客って立場なんで、客の前で喧嘩はやめておきませんか」

戸際が響に目線をくれながら言う。居心地悪そうに、身を縮めている響の様子に、確かに客前でするような話でもなかったな、と少し後悔をする。きっと北条も同じようなことを思っているに違いない。


「悪かったな響」

「いえ……こちらこそ、すみません」


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