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「・・・は?」

片手に持った書類を危うく落としそうになる。
やけに騒がしい生徒会室の扉をあけた瞬間に飛んできた何かを、しゃがむことで咄嗟に避けられたのは奇跡に近いだろう。


「あ、会長ー!おかえり、どこ行ってたの全く!」

ソファに腰掛けながら遅いよお、と語尾を伸ばして手を振る岩村に目を向け、それからこちらへ飛んできた物体を確認する。床をころころ転がっていくのは野球ボール大のカプセルで、つまり。


「……ガチャガチャ」

「響!このっ、もし会長にぶつかってたらどうするつもりだったんだ!会長と俺に謝れ!」
「会長はともかくなんでお前に謝んないといけないんだよ!もとはといえばお前が投げてきたんだろ!人のせいにするな!お前が謝れ!」
「なんだと!?」

部屋の中心でわき目も降らずに取っ組み合う響と戸際に目を丸くした。
自分の机で優雅にコーヒーを飲む北条のそばまで行って「なんだあれ?」とこっそり尋ねると、北条は「さあ」と気のない返事をするばかり。ぎゃんぎゃん騒いでいる二人なんて目に入りもしないようで、北条も、ソファで携帯をいじる岩村も、普通の顔してこの場にいる。戸惑う俺ばかりがまるで異質だ。

「……おい、一回落ち着け。そもそも、なんで響がここにいるんだ?」

「……俺は大反対ですからね」

ふてくされたようにそっぽを向いて言う戸際。一体何に大反対だというのか、まずそこから説明をしてほしい。
そう思って響へと顔を向けると、これまた忌々しそうに戸際をにらみつけている。どうやらあまり仲は良くないらしい。同じ学年だと思って響のことを任せすぎただろうか。その様子を見かねたのか、岩村は立ち上がるとお互いにそっぽを向く響と戸際の肩に腕を回した。


「快斗も巡流もちょっと落ち着けよ。ちゃんと話し合って俺たちで決めたことだろー?そんなんじゃなんもうまくいかないと思うんだけど」

「……」

「でしょー?ほら、仲直り」

響も戸際も、二人してぼそぼそ何を言ってるか聞き取れない声でも岩村は満足したらしい。勢いよく二人の背中を叩くと、さっさとソファへと戻って行ってしまった。一体なんなんだ、親か?

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