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side* change


「雨か、」

瞼の隙間から入り込む光に目を細めて腕で光を遮断する。
腕と顔の隙間から覗く薄暗い室内に、ああもう朝が来たのかと少し開いた口から息を吸い込む。
どんよりとした室内、窓の外から聞こえてくる雨音に気分は下がり、つい口にした言葉は外の水が跳ね落ちていく音に消えていった。


「ってえ・・・」

ピリ、と痛んだ首元をそっとなぞるように触れる。
指先で感じる絆創膏の素材の上から刺激が伝わってやはり少し痛む。よっこらせ、とベッドから身体を起き上がらせて、枕元に置いておいた充電中のスマホを手に取る。
何件かの通知をシカトしてパスワードを記入してからカメラのアプリを起動させた。

「あいててて、」

内側カメラとは本当に便利なものだ。
携帯の画面に映った自身の寝起きの呆けた顔にやばい顔。と口をつぐみながら首元に雑に貼ってある絆創膏を端からゆっくり剥がしていく。ペリ、ペリ、と痛みとともに鳴る音が雨音の響く室内にむなしく消える。

「うわ、きっも」

くっきり浮かび上がった歯型。若干鬱血しているのか色は変色して紫色だ。
そっと傷口をなぞる。皮膚の表面の若干の凹凸感にあからさまに顔をしかめて、ああもう見てるだけで痛い。これ重症だろ。


「赤城君、朝ご飯できたよ」

部屋の扉が控えめに叩かれる音とともに同室者の声がかかる。
慌てて携帯をスエットのポケットに仕舞い込んで、ああ。と短く返事を返した。同室者は俺の返事が返ってきたのを確認してから無言でリビングへ戻る。大体これが週に3回ほど。
この部屋での朝食に関しては各自でというものだが、お互い時間があり作れそうなときは相手の分も作ったりする。持ちつ持たれつってやつ。特別仲がいいわけでもないし悪いわけでもない。
初めこそあっちは俺にいろいろ気を使ってきたみたいだが、そのうちこれが日常になっていった。Bクラスの割にいい性格をしている奴だ。


「いやいや。」

そんなことはどうでもいいんだよ。
もう一度触れた首元。さすがにこれを晒して歩く度胸はない。俺は一途で清廉潔白な生徒会長親衛隊隊長なのだ。仮に、この跡をつけたのが生徒会長様であろうとも。

「くく、・・・ふ、はは」

まさか噛みついてくるとは思わなかった。
あの時の苦しい鈍い痛みと、熱が中心へ集まっていく、昂る高揚感はけして忘れることはないだろう。ああ、だからいいんだあの男は。


「・・・」

そろそろ準備をしなくては。卓上に置いてある、昨晩張り付けた大き目の絆創膏と同じものを手にして部屋の鏡を覗き込みながら首元にそれを張り付けた。
さあて、今日は雨だ。どうせ自習になるであろう体育の時間を使って生徒会室にでも居座ってやろう。いや、今日一日会長に付きまとうのも悪くない。首元の傷を見せてやりたいなあ。


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