ある男の話
結局はすべて己の保身のためだったのかもしれない。
頭のどこかではこのままではいけないとわかっていたはずだった。
しかし俺は変化を恐れ、現状に妥協し身を任せていただけだった。変わることが怖い?得るものが増えれば、失うものも多くなる。そんなこと、わかりきっていて。
後悔なんてしたくない。
いつかの俺が言った言葉だ。人生において、後悔をしたくないだなんて、そんなことは実に普遍的でどのような人間だって感じ考えることだ。甘ったれている。やはり己はまだ考えが未熟であったのだ。
すべてがうまくいくような気がしていた。
日常が幸せだった。
なんの変哲も無い毎日が、急に遠ざかっていくかのように空は曇り、強い雨を降らせた。
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