サス誕




 早朝。カーテンの隙間から覗く朝日の光
 が部屋の床に一筋の線をつくっていた。
 一人暮らしのこの家からは、ひとつの規
 則正しい小さな寝息しか聞こえない。い
 つもならもう起きている時刻なのだが、
 今日に限ってはふて寝と言ってもいいだ
 ろう。少し前までは誕生日なんてどうだ
 ってよかった。祝ってもらいたいなんて
 思わなかったのに。変わったのはあいつ
 と付き合い始めてからだろうか。初めて
 芽生えた感情だった。誰かと一緒に誕生
 日を過ごしたいだなんて。それなのに。
 仕事なら仕方ないと頭ではわかっている
 。わかっているのだが。

 唇に見覚えのある何かが当たった。最初
 は触れるだけだったそれは次第に深くな
 っていく。息が苦しくなって、そっと瞳
 を開いて見えたのは楽しそうな恋人の顔
 。

 「ん、っんう…!」

 頬を赤くして眉を寄せる仕草は、こいつ
 にとっては逆効果になってしまうのをわ
 かっているのだが、寝起きな上に酸素が
 足りないのだ。仕方がない。幸いなこと
 に手は拘束されていなかったから全く力
 の入らない手でのしかかってきている肩
 を押した。男は俺が息が続いていないと
 ようやくわかってくれたのか、惜しそう
 に唇を離した。解放された唇から何度も
 酸素を取り入れる。気付いたら涙が目に
 滲んでいた。突然の訪問者を歓迎する気
 がさらさらない視線で睨みつける。そり
 ゃあ、寝込みを襲われたのだ。歓迎なん
 てする気にならない。でも、と寝起きで
 朝からあのような口づけをされてぼーっ
 としたままのまわらない頭で考える。も
 ちろん、朝の早くから勝手に自分の家に
 入ってきて挙げ句、ベッドの上で俺に跨
 っているというのもずいぶんとおかしい
 のだが、何故こいつがここにいるのだろ
 う。

 「アンタ、今日仕事だって…」
 「ん?そうだよ。でも、やっぱり誰より
 も先にサスケに言ってあげたくて」
 「…」
 「誕生日おめでとう、サスケ」

 愛しそうに言われて、顔が赤く染まって
 しまった。申し訳なさげに、今日1日ず
 っと一緒にいてあげられなくてごめんね
 と続けられ、素直になれない自分はどん
 な反応をすれば良いのかもわからなくて
 まだ力の入らない身体を起きあがらさせ
 て、一瞬だけ唇を重ねた。

 「…早く帰ってこいよ、ウスラトンカチ
 」

 ありがとうも言えなかったのにカカシは
 とても嬉しそうな表情でそれじゃ行って
 くるねと満足げに言った。本当にあれを
 言いに来ただけだったのか。誕生日の度
 に何十回も言われてきたおめでとうとい
 う言葉よりも愛しい人に言われたおめで
 とうが一番嬉しかった。いってらっしゃ
 いと返してやれば、あのキスの続きは帰
 ってきてからねと軽口をたたいて部屋を
 出て行った。

 部屋に残ったのは真っ赤になった頬とど
 うしようもない幸福感だった。





 その一言が















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