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春。それは新しい出会いの季節であり、恋の季節である。並中でも新たな出会いをして、恋に落ちた者がいた。

「そ、それでは、風紀委員長より新入生の皆さんにお言葉があります」

教頭のどこか不自然な紹介が終わると壇上に学ランを羽織った生徒が現れた。並盛最強、もしくは並盛最凶と謳われる風紀委員長の雲雀恭弥だ。

「群れたり校則を破ったりしたら……咬み殺す」

そう言ってトンファーを持ち上げ、生徒が怯えたのを見て雲雀は満足そうに壇上から降りた。群れるのが嫌いな雲雀は式が終わっていないのに体育館から立ち去っていった。いくら雲雀の容姿が素晴らしくとも、第一印象がこれでは誰も好きになったりしないだろう。だが、この体育館の中で1人だけ雲雀に惚れた愚か者がいた。今年から並盛中に勤務となったディーノだ。

式が終わると先ほどの生徒について尋ねたいディーノだったが、担任としての務めや式の片づけなどに追われてなかなか聞けなかった。ようやく全ての仕事が終わった頃には、学校の敷地内に教師や生徒の姿は誰1人として見当たらない。ディーノは仕方なく帰り支度をしてどこかしょんぼりしながら職員室から出ていった。

「あ…」

するとそこには、知りたいと思っていた相手―――雲雀が。まるで神様からのご褒美のように雲雀はそこにいた。

「貴方が新任?」

並中のすべてを把握している雲雀は見たことのない外国人を見て、これが新しく来た教師かぐらいにしか思っていなかった。

「あ、あのさ…名前教えてくれねぇか?」

相手はただの生徒であるが、ディーノにとっては一目惚れした相手。イタリア人とはいえ緊張しない訳がない。

「雲雀恭弥。それより早く帰りなよ」

生徒から早く帰れと言われると立場が逆ではなかろうかと思い口を開こうとするが、すでに雲雀は背を向けて薄暗い廊下を1人で歩いている。ディーノはその背を追いかけていき、肩を掴んだ。雲雀はすぐに振り返るとキッとディーノを睨んだ。

「……何の用?」

「…よかったら一緒に帰ろうぜ。送ってくしさ」

今度はきちんと話しかけることができ1人で満足していた。

「僕は並盛の見回りがあるから1人で帰りなよ」

そう言われてしまってはこれ以上何も言うことができず、ディーノはただ雲雀を背中を見送ることしかできなかった。






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ようやく1話をアップできました(´`*)
いつ完結するかわかりませんがお付き合い戴けると幸いです。

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テーマ「人外ファンタジー」
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