真夜中のお届け物

日付が5月4日から5月5日に変わる頃、雲雀は床につこうとしていた。しかし、それを邪魔するかのように着信音が鳴り響いた。着信音は雲雀が設定した並盛中の校歌ではないので、通知を見なくても相手がわってしまい雲雀は電話に出ようとしない。
一度は切れたが、間を空けずに二度三度と立て続けに同じ着信音が鳴り響くので、痺れを切らしてようやく電話に出た。すると、嬉しそうなディーノの声が機会越しに聞こえてきた。

『Buon compleanno、恭弥!』

「ぶおん?」

『イタリア語で誕生日おめでとうって意味なんだ』

「誕生日……?」

ゴールデンウイークに突入し学校に行かなくなった。そのため、すっかり日付感覚を失っていた雲雀は、近くにあった電波時計で日付を確認した。

「あぁ、確かに今日だね」

『おいおい、自分の誕生日くらいちゃんと把握しといてくれよ。じゃねーと、プレゼント持ってきた意味ねぇじゃん』

「貴方今どこなの?」

ディーノの持ってきたという言葉にひっかかり、もしや日本に来ているのだろうかと疑ってしまう。だが、数日前に当分は来日できそうにないと、半泣き状態で電話がかかってきたことを思い出した。
そして、意識が過去から現在に戻りかけていた時、ふいに来訪者を告げるベルが鳴った。

「誰か来たみたいだから切るよ」

『え、あ、おい!』

通話終了ボタンを押しながら玄関のドアを開けると、イタリアにいるはずのディーノが立っていた。

「夜遅くにわりぃな。改めて、誕生日おめでとう」

穏やかな笑みを浮かべるディーノに、どういうことだと問いつめようとしたが、それはディーノによって阻止された。

「生まれてきて、オレと出会ってくれてありがとう」

そう言うと、ディーノはそっと額に口づけた。

「……珍しいね、貴方が額にするなんて」

「なんだよ、口がよかったのか?」

からかい半分に返すと、瞬く間にディーノの喉元にはトンファーがあてがわれた。先程の甘い雰囲気などどこかに消え去り、今にも獲物を狩ろうとする殺気付きで。

「わりぃ、わりぃ。とりあえず、これ仕舞ってくれよ」

な?、と念をおしてトンファー掴むが、一向に仕舞う気配はない。

「ちゃんと理由を話すからさ」

雲雀の力が緩んだのを見逃さずにトンファーを下ろさせると、家主の許可も得ずに中へ入っていく。雲雀が制止する間もなく、ディーノは座布団に腰をおろしていた。

「ほら、こっち来いよ」

向かい側に座ろうとした雲雀の手を引いて、自分の脚の上に向かい合わせで座らせると、唇ではなくまた額にキスした。

「さっきから額ばかりな理由は何なの」

「お、そうだったな。額には祝福の意味があるんだ。ちなみに、ここは愛情の意味があるんだぜ」

そう言って唇にキスをすると、雲雀は満足そうに微笑んだ。が、すぐにこの甘い雰囲気をぶち壊す一言を発した。

「で、プレゼントは?」

後に、それはまるで小悪魔のようだった、と酒の席で語るディーノだった。





***
雲雀さんお誕生日おめでとう(*´▽`*)
ついったーの企画に提出させて頂きました。

[ 4/4 ]



「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -