たくさんの愛を君に

イタリアで仕事をしていたディーノの雲雀専用携帯が珍しく震えた。

「きょ、恭弥から電話!」

少し前までやっていた書類を投げ出して電話に出ると、雲雀から発せられた言葉は意外なものだった。

「6日に高級ちくわを送ってきて」

「……は?」

ディーノもまさか恋人からの初めての電話がパシリだとは夢にも思わなかっただろう。だが、相手はあの雲雀恭弥だ。仕方あるまい。

「わかった?」

「お、おう…」

そもそも何故6日なのか、何故ちくわなのかディーノにはさっぱり理解できなかった。しかし、あの雲雀が頼んだものを送らなければ、何をされるかわかったもんではない。

「ロマ、6日に日本に行きたいんだけど都合つくか?」

なので、その謎を解くためにディーノは日本行きを決めた。

「つくといえばつくが、滞在期間が短いぜ?」

「サンキューな、ロマ」

こうして、ディーノは高級ちくわをぶら下げて並盛へと旅立っていた。


6月6日。並中の応接室で雲雀はちくわが届くのを待っていた。

「ロール、もうすぐ来ると思うから」

「キュー」

ロールを撫でていると物凄い勢いでドアが開いた。いや、壊れた。

「……咬み殺す」

転がり込んできた相手など確認する必要はない。このような入り方をしてくる人物など1人しかいないのだから。

「…ミスった!」

「これでドアを破壊するの何度目だと思ってるの?」

トンファーを構えてディーノの前に立つと容赦なく振り下ろす。だが、当たれば大怪我をすることを知っていながら避けない馬鹿はいないだろう。案の定、トンファーがディーノに当たることはなかった。

「あっぶねー……。それよか、ほら、頼まれてたモノ持ってきたぜ」

「僕はちくわだけを頼んだだよ」

暗意にディーノは来なくてよかったと告げると、ロマーリオが差し出したちくわを受け取りロールを呼び寄せる。

「ロール、おいで」

屈んで待っていると、雲雀を傷つけないようにゆっくりと手のひらの上に乗った。

「誕生日おめでとう、ロール」

包みを開けてちくわを取り出すと、ディーノには見せないような微笑みを浮かべながらちくわを与えた。

「ロール、オメデトウ、オメデトウ」

いまいち状況が飲み込めていないディーノは、不思議そうに1人と2匹を見つめている。そんな視線に気づいたのか、雲雀が振り返り。

「今日はこの子の誕生日だよ。知らなかったの?」

「へぇー、ロールにも誕生日があったんだなあ」

まさか匣兵器にも誕生日があったなんて、ディーノにとっては予想外だ。だが、知ったからには祝ってあげたいと思うのが人間だろう。

「わりぃな、ロール。俺何も持ってきてねぇんだ」

「クピー!」

ちくわを持ってきたのがディーノだと理解しているのか、ロールはディーノを責めるどころか嬉しそうに手に擦り寄っていった。

その後、ちくわをたくさん食べて眠くなったロールは、2人と1匹に祝ってもらったおかげで幸せそうな表情を浮かべて眠りについた。








***
ロールケーキの日ということで、ロールの誕生日らしいです^^*


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