猫に小判

5月5日。祝日である今日は雲雀以外並森中は誰もいない。そんな学校の中にある応接室にドアをノックする音が響いた。

「…入りなよ」

来訪者が誰であるのか予想のつく雲雀は心なしか嬉々とした声で返事をすると、ドアをジッと見つめて入ってくるのを待った。

「久しぶりだな。休みなのに学校なんて恭弥らしいな」

数週間会わなかった程度久しぶりと言うのは雲雀にとって些か理解しがたいことではあるが、敢えて追及せずに己の欲を満たすべくディーノに近寄っていく。

「ねえ、闘ってよ」

「え、いや…今日はそのつもりじゃねぇんだ」

いつものディーノなら少し渋る態度を見せながらも必ず闘ってくれるので雲雀は何故今日はダメなのかと疑問を持ち、闘ってくれないことに不満を覚えた。そんな感情が表に出ていたのか、ディーノはどこか照れ臭そうな顔をしてから雲雀をまっすぐ見据えた。

「恭弥、誕生日おめでとう。生まれてきてくれてありがとな」

そう言うと、ディーノはポケットから小さな箱を取り出した。中身は大きさからしてだいたい予想外がつく。

「……どういうこと?」

どうして自分にこんなものを渡すのか雲雀には理解できない。確かに雲雀はディーノと恋人である。それは雲雀自身も不本意ながら認めている。だが、それとこれは別だ。

「ジャッポネーゼは20歳にならないと結婚できないだろ?だから、これは予約だ」

箱からシンプルな指輪を取り出すと雲雀の右手を取り、薬指に指輪を嵌めて自然な流れでその指輪にキスを落とした。
普通の女性ならば顔を赤くしながら喜ぶであろうが、相手はあの雲雀恭弥である。戦闘の役に立たないリングになど興味はない。

「戦闘の邪魔になるモノなんていらない。だいたい、装飾品は校則で禁止されてる」

「……ならせめて、オレと会うときは着けててくれねぇか?」

雲雀にとって校則は法律よりも重いものだ。いくらディーノが説得しても無駄だろう。虫除けも込めて贈ったモノだが、その効果は諦めるしかない。

「着けて欲しかったら本気で闘いなよ」

「しゃーねぇな。誕生日の主役がそういうなら闘ってやるぜ」

なんだかんだで雲雀に甘いディーノは屋上に向かうのだった。






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恭弥さん、1日遅くなりましたが、お誕生日おめでとうございます(><)


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