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収拾がつかなくなった飲み会のお話



年末、それぞれの生活もあり皆忙しいはずだろうにこんなに人が集まったのにはとても驚いた。それほどあの、5年前の出来事が各々思い入れ深い試合だったのか、ただ盛り上がりたいだけなのかまではわからないが。

べろんべろんに酔っ払うメンバーを余所に車で来ていた俺はシラフで一人冷静に周りを見る。ユース世界大会に参加したメンバーで飲み会、という名目とは聞いていたが、誰かが誰かを呼び、人は出たり入ったりを繰り返す。チームにいなかった選手、女子マネージャー、チアメンバー…なんだかよくわからない集まりになっていた。

「キッドさん顔こわーいですよ」

にゅっ、と俺の視界に入ってきたのは白い頬をこれでもかと赤く染めた陸。

「陸、少し呑みすぎじゃないの?」
「あはー俺としたことがついつい熱くなっちゃってー」

陸は酒に弱くはない。強くもないが、きちんと自分の限界を弁えて量を調整できる子だった。なのに今日は珍しく顔を真っ赤にさせ、グラス片手にまだ呑んでいる。

「セナのやつ、陸はお兄さんぶってるけどほんとは僕よりガキなんだーって、生意気になっちゃってたんすよ!」
「それでグイグイと?」
「ガキなんて言われちゃ呑むしかないでしょー」

その考えが少しガキくさい、と思ったが口には出さない。話のセナ君はというと、まあ随分呑まれてしまったようで蛭魔の膝枕で夢の中だ。恐ろしくて誰も見てみぬフリだが。
陸はフラフラ覚束無い足取りで同い年の子らが集まってる方へ行ってしまった。一応呑みすぎとは忠告したので、もうこれ以上呑むことはないだろう。

飲み会はだいぶ盛り上がり、あっちでは大酒比べ、静かに呑んでいる席、あっちでは大食い大会、誰が始めたのか野球拳…男だけのそれはシラフの頭には絵面的に辛いので見なかったことにした。だんだん収拾がつかなくなってきたかに見えたが、さすが大晦日だけあってか早々に帰って行く人数が増え、なんだかんだで最後には当初のメンバーだけこの場に残っていた。
開始数時間で眠ってしまったセナ君、本庄君。ゲロりそうとトイレに駆け込む一休と陸と桜庭君。阿含と蛭魔は意地の張り合いか本当にザルなのか無言でまだ呑んでいる。一番近付きたくない席と俺にぼやいたマルコ君は笑顔の大和君に捕まった。水町君とモン太君の大熱唱をお腹を押さえて笑う筧君とコータロー。酒より食べ物な峨王君と栗田君。そして相変わらず鉄馬は俺の隣でちみちみ呑んでいた。



2014/01/24 13:58


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