アポカリプス

「赤也!」

「!」

飛び込んで来た声に赤也が振り返ると、そこには少し怒った表情を浮かべるユキがいた。

「もう、さっきから何度も呼んでるのに。ぼうっとしてどうしたの?」

「え?」

辺りを見回すとそこには楽しそうに話す幸村達の姿があった。

合宿所の一室で、荷物を隅に置いたまま輪になって集まるレギュラー達。

少し離れた場所では青学や不動峰のレギュラー達も集まっていた。

「これって……」

茫然と佇む赤也の耳に柳達の会話が飛び込んで来る。

「しかしこれで何かわかるのか?」

「心理テストだそうだ。この"おまじない"自体はよくある噂の一つに過ぎないが、それを行う時の各自の様子でその者の性格がわかるらしい」

「面白い試みだと思ってさ。別に困るものでもないし、たまにはこういうのも良いだろう?」

「そうですね。"形代"というのは厄払いにも使われると聞いた事がありますから、この切れ端にも何か意味があるのでしょう」

幸村達の会話を聞いている内に徐々に記憶が戻って来る。

強化合宿の二日目、青学や不動峰も交えて行った"心理テスト"。

柳の提案で様々な心理テストを行ったが、その最後に行ったのが"幸せのサチコさん"と呼ばれるおまじないだった。

そのおまじないは仁王の提案だったが、青学の菊丸やユキが乗り気になり、結局それぞれのグループに別れておまじないを行う事になった。

一つの人形を全員でちぎるという儀式にも似たおまじない。

……仁王と哲志が持っていたあの"切れ端"がおまじないの切れ端だったのだ。

つまりこれはあのおまじないをする直前のシーン。

時間が巻き戻ったのか?

それともただ夢を見ているだけなのか?

わからないが、一つだけはっきりしている事がある。

このおまじないがきっかけであの悪夢が始まったのだ。

これは決してやってはならない禁断の儀式。

何としても止めなくてはならない。

「幸村部長!そのおまじないは……!」

言い掛けた赤也は、幸村の手を見て言葉を失った。

親指と人差し指に挟まれたその"切れ端"は、儀式の終わりを……あの悪夢の始まりを意味していた。

つまりこれはおまじないを行った"後"のシーンだったのだ。

「!」

絶望する赤也の耳にまたあの少女の笑い声が響いた。

いつまでも、いつまでも、鳴り止まないベルのように、狂った笑い声だけが響き渡っていた……。


END.


→あとがき
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