アポカリプス

「ここは……」

ふと気づくと赤也は瀕死のユキを抱いたまま、見た事もない場所にいた。

荒れ果てた木造校舎の教室。

その中央に跡部達の死体と幸村、そして哲志が倒れていた。

今まで見ていた景色が霧が晴れるように薄れて、気がついたらここにいたのだ。

「何だよ、これ……ここどこなんだ?何が起きて……っ」

困惑する赤也の近くで仁王は動じる事もなく平然と辺りを見回している。

ふと見ると薄汚れた黒板の前に一人の少女が倒れていた。

鈍器のような物で頭を撲られたのか、後頭部が陥没し頭蓋骨も割れてしまっている。

見開かれたままの瞳から涙がこぼれ落ちて床に染み込んでいた。

その少女の死体を目にして、哲志が呻いて必死に手を伸ばした。

「っ……由香……!」

血の海を這いずるようにして進み、冷たくなった少女の頬に触れる。

「ごめん……ごめんな、由香……ずっと独りにして……」

血と一緒に涙がこぼれ落ちて哲志は腐りかけた小さな手を握り締めた。

そして、少女の隣に倒れたまま哲志は静かに息を引き取った。

「……妹だったのか」

この小さな遺体が哲志がずっと捜し求めていた妹だったのだろう。

離れ離れになった兄妹は、ようやく再会したのだ。

だがそれはあまりにも悲劇的で悲しい再会だった。

目の前に横たわる跡部の無惨な遺体も、今はもうユキの心をえぐる凶器でしかない。

こんな結末は誰も望んでいなかった。

悩んで苦しんで、それでも前に進もうと努力する。

そんな毎日の方が何倍も良かった。

「……許さねえ」

気がついた時にはもう赤也はカフェテリアで拾ったナイフを握り締めて仁王の胸に突き刺していた。

このデスゲームのルールはただ一つ。

生き残った者が勝つ、それだけだ。

ならば仁王を倒せば全てが終わる。

それでも失ったものはもう二度と元には戻らないのだ。

「っ……ゲームオーバーじゃな」

体にナイフが刺さったまま仁王が呟くように言った。

ふらつきながらもその顔には笑みが浮かんでいる。

この状況でどうして笑っていられるのか赤也には理解できなかった。

「せっかく"チャンスを与えた"のにのう……"また"ゲームオーバーぜよ……」

「!」

仁王の言葉に赤也はカッとなってその顔を殴りつけた。

「てめえまだそんな事言ってんのかよ!!何がチャンスだ、何がゲームだ!こんなの絶対に許さねえ!!」

「っ……もう"聞き飽きた"ぜよ」

そう呟くと仁王は血の海の中に倒れた。

静まり返った教室で、赤也だけが茫然と立ち尽くしている。

その背後で笑い声がした。

振り返った赤也の目に映ったのは、ボロボロの机に腰掛けて笑う"赤い服の少女"の姿だった。

少女は死体に囲まれて立ち尽くす赤也を見て狂ったようにいつまでも笑い続けていた……。

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