第二章 再来

「それにしても本当に何なんだよ、この学校……。薄気味悪いし、外にも出られねえ」

「はあ……どっかに食い物ねえかな。腹減ったぜ」

「俺なんて今日忙しくて昼飯すらまともに食ってないっスよ」

「あーそういやお前らのクラス、大人気だったもんなあ」

「丸井先輩、仁王先輩からチョレート貰ったって言ってませんでしたっけ?」

「持ってたらとっくに食ってるつーの。帰りに食おうと思って鞄に入れてあったんだよ」

恐怖を紛らわすように赤也とブン太は会話を続けながら廊下を進む。

時折教室の中を覗いては幸村達の姿を捜すが、校舎内は静まり返っていて全く人の気配がない。

「誰もいないっスね……」

「携帯も通じねえし、あの女も見当たらねえな」

「ああ、教室で会ったあいつっスか」

「何か胡散臭い奴だったよなあ。俺、ああ言う頭の良さそうな女苦手」

「そういやユキ、あいつと知り合いなのか?」

赤也は後ろを振り返ってユキに尋ねるが、ユキは先程からずっと黙り込んだまま何か考えているようだ。

「ユキ?」

「え?あ、ごめん。何?」

「お前、大丈夫かよ。さっきからずっとぼーっとしてるだろ」

「もしかして具合でも悪いのか?」

「ううん、大丈夫。ちょっと考え事してただけ」

ユキはそう言って無理やり笑みを浮かべる。

「……これだけ捜しても真田君達に会えないって事は……やっぱり違う次元にいるって事なのかな」

赤也達に気づかれないよう小さな声でユキが呟くと、ふとブン太が何かに気づいて足を止めた。

「おい赤也、お前その首どうしたんだよ」

「へ?」

赤也はきょとんとした顔でブン太を見る。

「どうしたの?二人共」

「いや、赤也の首に何か痣みてえなのが……」

「痣?」

赤也に近づいて目を凝らすと、確かに首に赤い痣のようなものが見えた。

「本当だ、赤くなってる……。赤也、痛くないの?」

「いや、全然。気のせいじゃねえの?」

本人は全く気にしていない様子だったが、ユキはふとある事を思い出して手を叩いた。

「そうだ!確かここ保健室があったよね?消毒用の薬とかあるかも」

「ああ、そういやあったな。一階に」

「別にいいっスよ、こんくらい。放っとけばその内治るっしょ」

「ダメだよ、赤也。ちゃんと手当てしなきゃ」

「ま、幸村君達も見つからねえし、ちょっと寄ってくくらいいいだろ」

「わかったよ……」

赤也は渋々頷いて、一階にある保健室へと向かった。

「んー、お!これじゃね?」

棚から見つけた薬瓶を持ってブン太がユキを呼ぶ。

「うん、大丈夫そう。じゃあ塗るから、赤也じっとしててね」

中身を確かめてからユキは赤也の首に薬を塗り込んだ。

「うわっ、くすぐってえ!」

「もう、動かないでってば!」

薬を塗り終えてユキが薬瓶の蓋をしめる。

それを棚に戻そうとした時、急に目の前が揺れてユキはよろめいた。

「うわっ、何だ!?」

「こんな時に地震かよっ」

老朽化した校舎がぐらぐらと揺れる。

「ユキ、大丈夫か!」

「う、うん!」

ベッドの脚にしがみついたり、壁に手をついたりしてユキ達は揺れが治まるのを待った。


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