第二章 再来

同じ頃、1年B組の教室では真田が幸村とジャッカルに事情を話していた。

真田自身も以前とは違う状況に困惑を隠し切れずにいたが、幸村は黙って真田の話を聞いていた。

「……事情はわかった。でも、すぐには受け入れられないな」

「ああ、わかっている。だがこれは本当の事なんだ」

「別に俺も幸村もお前が嘘をついてるなんて思ってねえよ。お前はそんな男じゃねえし、ユキも様子が変だったしな」

ジャッカルの言葉に幸村も頷く。

「とりあえず結論は後回しにしよう。今はこの状況をどうするかの方が先決だ」

「ああ、そうだな」

「元の世界に帰るには"逆打ち"ってのをやればいいんだろ?」

「ああ。だが全員が揃わなければ実行する事はできん」

「まずは皆と合流する必要があるな。真田、他に何か手はないのか?」

真田はしばらく考え込んだ後、ふとある事を思い出して口を開いた。

「地下の最深部へ行けばユキ達と合流できるかもしれん」

「地下?」

「この学校、地下室なんてあるのか?」

「理由はわからんが、前回ここへ来た時は地下でユキ達と合流する事ができた。ユキが赤也達と一緒にいるならば、そこへ向かうはずだ」

「地下への入り口は?」

「別館にある校長室か……。確か2年A組の教室にも隠し通路があったな」

「わかった。じゃあとりあえずそこへ行ってみよう」

幸村の言葉に真田とジャッカルも頷き、三人は廊下のつきあたりにある2年A組の教室へと向かった。

教室内はだいぶ荒れ果てているが、真田は記憶を頼りに隠し通路があった中央の壁を調べてみた。

しかしどんなに調べても隠し通路を開く仕掛けのような物は見当たらない。

叩くと一か所だけ音が違うのでこの奥が空洞になっているのは間違いないようだ。

「もしかして反対側からしか開けられねえんじゃねえか?」

「その可能性はあるな」

「となるとさっき言ってた別館の校長室から行くしかないね」

「ああ。一階に渡り廊下があるはずだ」

「わかった、行ってみようぜ」

三人は教室を出て一階に下りるが、廊下のつきあたりまで行っても別館への道はどこにも見当たらなかった。

「何故だ!」

「……」

幸村はしばらく考え込んだ後、ある事を思い出して真田に言った。

「そう言えば前の世界……とでも言えばいいのか、俺が"死んだ"のは柳が焦って装置を動かしたからだと言っていたな?」

「あ、ああ。図書室と廊下の端に置かれていた滑車のついた装置を動かしたのだ」

「隠し通路がある事と言い、ここは普通の学校とはだいぶ違うようだ。その装置にも何か意味があったのかもしれない」

「どういう事だ?」

「つまりその装置が"別館への道を開く鍵"になっていたのかもしれない」

「!」

「なるほどな。確かに可能性はありそうだよな」

「……わかった。あまり気は進まんが装置を動かしてみよう。前と同じなら図書室にあるはずだ」

「それじゃあ行ってみよう」

そう言って歩き出そうとした幸村を真田が止めた。

「待て、幸村!装置の場所には俺一人で行く。お前達は……そうだな。さっき通って来た6年A組の教室で待っていてくれ」

「おいおい、一人で行くつもりか?」

「真田、単独行動は危険じゃないか?」

ジャッカルと幸村が心配そうに言うが、真田は頑として譲らなかった。

「案ずるな。俺はこの学校には慣れている。……もう二度と同じ過ちは繰り返さん」

「けどよ……」

ジャッカルはまだ不安そうに真田を見ているが、幸村はため息をつきながらも頷いた。

「わかった。そこまで言うなら俺達は待っている事にする。何が起こるかわからない。十分気をつけて」

「ああ、肝に銘じておく」

真田は力強く頷くと幸村達と別れて三階にある図書室へと向かった。


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