If…堕ちた帝王side.B

「……っ」


傷の痛みで目を覚ました赤也は、しばらくぼんやりと天井を見つめた後、現状を思い出してすぐに起き上がった。


動いた瞬間に体中に激痛が走ったが、どうにか堪えて部屋の中を見回す。


「どこだここ……確か俺、跡部に撃たれて……」


記憶の糸を手繰りながらもう一度辺りを見回すと、机の上にメモが置かれていた。


今まで耐えて
きたけど、
天が呼んで
る気がする。

朝日の中で
鳥が歌う調
べのように

ノエルの旋律が
啓示する

祈れば
解放される
苦しみから…


「これ丸井先輩の字だよな?…何だ、これ」


最初はメモに書かれた文章の意味が全くわからなかった。


しかし何度も読み返す内に、赤也はある事に気づいて体を強張らせた。


「ノエル……そうだ!これあのゲームの文と同じだ!」


プログラムが行われる少し前、赤也はブン太の家に招かれてそこで一緒にゲームをした。


ブン太の家には幼い彼の弟達がいて、その弟達が好きなゲームを一緒に遊んだのだが、そのゲーム内で登場した石版の暗号によく似ているのだ。


"ノエル"という名前のキャラに、鳥が歌う調べ、祈れば解放される…


ゲームの暗号と同じ単語や文章が使われてるが、暗号で重要だったのは文章そのものではなかった。


子供向けのゲームだったので難しい謎解きがあるはずもなく、単純に"文章の頭文字を縦に読めば"答えがわかるようになっていたのだ。


メモを書いたブン太も赤也と一緒に遊んだゲームの事を覚えていたのだろう。


だから同じ単語や文章を使えば、赤也なら隠されたメッセージを読み解けると思ったのかもしれない。


ブン太の思惑通り、赤也はメモを読み解く事に成功したが、外から聞こえて来た聞き覚えのある声に赤也は慌ててベッドから下りて玄関へと走った。


突進するように玄関から外に飛び出すと、そこに向かい合って立つ跡部兄妹の姿があった。


「撃つな!!!」


赤也の叫びは銃声にかき消され、反動に耐え切れなかったユキの体が民家の壁に激突する。


「ユキ!!」


駆け寄って抱き起すと、ユキは涙に濡れた目で赤也を見上げて言った。


「…赤也……。もう、終わったよ。全部。……ごめんね、約束守れなくて……」


「っ…なんで……」


「ずっと守ってもらってばかりだったから……今度は私が守る番。だから……」


「っ……」


赤也は何も言えずにぎゅっと強くユキの体を抱き締めた。


涙で濡れたその瞳に、"最愛の兄の死"が映る事のないように…。


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