If…堕ちた帝王side.B

『半日過ぎましたよー。残り半分、ちょっと急げー。死亡者は3人。氷帝学園8番・宍戸亮、9番・鳳長太郎、立海大附属中4番・仁王雅治。それから禁止エリアについてですが、今回からなくなりまーす。今まで禁止エリアだった所もOKでーす。ただ島の周りと分校は全て禁止エリアになるので、海岸には近づかないようにー。じゃあ頑張れよー』


放送を聞きながら、跡部は一人森の中を歩いていた。


鳳と別れた後、勘だけを頼りにユキを捜して歩き回っていたのだが、ふと顔を上げた瞬間、ある人物と目が合った。


「切原…!」


お互いに驚愕の表情を浮かべると同時に、赤也はショットガンを構え容赦なく引き金を引く。


跡部はとっさに近くの岩の後ろへ滑り込み弾丸を回避したが、その顔には焦りの色が浮かんでいた。


プログラムの出発時間から考えるに、立海最後尾になったユキと赤也は行動を共にしていると跡部は考えていた。


現に忍足と行動していた時に、二人のバックが同じ場所に放置されていたのを確認している。


しかし今、赤也のそばにユキの姿は見当たらない。


どこかではぐれてしまったのか、それともユキの身に何かが起きたのか。


いずれにしろ、ユキの身に危険が迫っている事は確かだ。


だが赤也にユキの行方を尋ねたところで、警戒心が非常に高まっている今の状態では話をする事さえ難しいだろう。


「切原!てめぇその傷で俺様に勝てると思ってんのか、アーン?」


木を背にしたまま跡部は挑発するように赤也に言った。


血の気が多い赤也が物陰から飛び出した瞬間に足を狙って動けなくし、落ち着かせてから話を聞くつもりだった。


だが赤也は跡部の予想に反して、思いがけない行動に移った。


「!」


赤也はショットガンをその場に捨てて一気に北の方角へ駆け出したのだ。


それはまるで獣のような動きだった。


「待ちやがれ!!」


不意打ちをくらって出遅れた跡部もすぐにその後を追う。


しばらく走ったところで、跡部は前方に赤也の姿を捉えて銃の引き金を引いた。


弾丸は跡部の狙い通り赤也の左足を貫き転倒させる。


「くそっ…動けよ!くそ!!っ……仁王先輩もお前が殺したんだろ!絶対に許さねぇ!!!」


噛みつくように赤也は吠えたが、跡部はそれには構わず左手をズボンのポケットに伸ばした。


単純とも言える赤也の性格では、鳳のようにメモで会話する事は難しいかもしれないが、赤也はようやく見つけたユキへの手掛かりだ。


どうにかして冷静さを取り戻させ、ユキの行方を尋ねるしかない。


しかしそこで複数の足音を耳にして跡部は後ろを振り返った。


「!」


そこには、銃声を聞きつけて駆け付けたユキ達の姿があった…。


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