バトルロワイアル

「はい。じゃあ次は立海大附属中ですねー。部長・幸村精市くん」


とうとう立海の番になり、最前列にいた幸村はギュッと手を握り締め立ち上がった。


ゆっくりと兵士の所へ歩いて行き、ディパックを受け取ると、そっと立海レギュラー達を見回した。


「……」


幸村はただ切ない目で微笑し、静かに出口へと歩いて行った。


全員がその姿を見つめ、そして…幸村は闇へと消えて行った。


誰かがクソッと呟いた気がした。


幸村が出て行った後、副部長の真田が出発し、続いて柳がディパックを受け取り出口へと向かった。


「……」


最後尾に座る赤也とユキを見た後、柳は坂持達には聞こえない小声で、赤也に何事か囁いた。


あまりの声量の小ささと一瞬という短時間の為、ユキには柳が何を言ったのか聞き取れなかった。


だが赤也はどこか思い詰めたような表情で、痛そうなくらい強く手を握り締めていた。


「次、4番、仁王雅治くん」


2分後、今度は仁王が呼ばれた。


「……」


仁王は無言で席を立ち、淡々と兵士からディパックを受け取った。


出口へと向かう途中、赤也とユキの隣まで来ると、ピタッと足を止め、柳とは違いハッキリとした声で、


「赤也。頼んだぜよ」


「!」


そう言ってまた出口へと歩き出した。


赤也はハッとして出て行く仁王の背中を見つめていたが、やがて、何か決心したように、まっすぐ前を見た。


その後、ジャッカル、丸井、柳生と続き、とうとう赤也の番になった。


「あと二人ですねー、8番、切原赤也くん」


「……。」


席を立つ赤也をユキは心配そうに見つめ、キュッと赤也の服を握った。


「!」


赤也は一瞬驚いたものの、ニカッと笑って兵士のもとへ歩いて行った。


そしてディパックを受け取ると、その重さを確かめるように上下させた。


「結構重いっスね〜」


「まぁ6日分の水とか入ってますからねー、重いんじゃないんですか」


「もうちょっと軽くなんないんスか?これ女子にはキツイっスよ」


いつもの調子で赤也が言うと、坂持はそうですねーと言ってちらっとユキを見た。


それからまたすぐ赤也に視線を戻し、ほら早くしないと跡部さんが出発出来ませんよーと言った。


「はーい」


赤也はディパックを背負い直すと、スタスタと出口へと向かった。


一瞬だけユキの方を振り向くと、声は出さず唇だけで"待ってっから"と言った。


ユキは少し目を見開いたが、"わかった"と唇を動かした。


「いやー彼は元気ですねー。あれくらい元気なら、すぐに一人二人"殺れる"かもしれませんねー」


赤也が出て行った後、そう坂持が言った。


ユキはカチンときたが、下手なことを言ったりしては危険だと、必死で怒りを抑えた。


…なんて奴なの!


何も知らないくせに、勝手なこと言わないでよ!


絶対許せない!


アンタなんか真田君の"ハイパー真田クラッシュ"くらえばいいのよ!


(ハイパー真田クラッシュとは、以前、柿ノ木中との練習試合で大幅遅刻した赤也を真田が叱った際、身につけた必殺技である)


「はーい。2分経ちました。最後ー9番、跡部ユキさん」


「……」


ユキは怒りと恐怖で震える手を押さえ、スッと立ち上がり、兵士の所へ向かった。


赤也が言っていた通り、ディパックは非常に重かった。


私物を肩に掛け、ディパックを反対側の肩に掛けようとしたが、重すぎて持ち上がらず、仕方なく引きずって出口へと向かった…。


→あとがき
4/5

prev / next
[ BackTOPしおりを挟む ] 
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -