バトルロワイアル

「はい。じゃあ次、氷帝学園2番、忍足侑士くん」


跡部が出て行ってから2分後、今度は忍足の名が呼ばれた。


「……」


忍足は冷静になれ…と自分に言い聞かせ、無言のままディパックを受け取った。


チラッと氷帝メンバーを見てから、ゆっくりと出口へと歩き出す。


「…侑…君…」


ふとユキの小さな声が聞こえ、忍足は目をやった。


そして少し困ったような笑みを浮かべ、


「大丈夫や、ユキちゃん…」


そう言って、跡部と同じく部屋を後にした。


「……っ」


ユキはギュッと手を握りしめ俯いた。


どうしてこんなことになったんだろう。


いつものように皆とテニスやって、騒いで、楽しく過ごすはずだったのに…


どうして…


悪い夢なら、早く覚めて。


もう見たくないよ。


お兄ちゃん…


怪我してた。


銃で撃たれたみたいな傷があった。


まさかあの時の電話…


あの音は銃声だったの?


逆らったら殺されてしまう…


でも…皆と殺し合うなんて出来る訳ない。


だって…"仲間"なんだもの。


今までずっと一緒に頑張って来た、かけがえのない仲間なのよ?


体が弱く、引っ込み思案だった私を変えてくれた侑君とガックン。


くじけそうになった時、勇気をくれた亮。


いつも皆を笑わせてくれるジローちゃん。


病気で学校休みがちだった私に、丁寧に勉強を教えてくれた滝君。


練習試合で知り合った2年生の樺地君、長太郎君、日吉君。


…そしてお兄ちゃん。


皆…大切な人なの。


それから…留年して転校もして…


右も左もわからなかった私に、初めて声をかけてくれた赤也。


遅刻して急いでいたのにも関わらず、私を職員室まで連れてってくれたよね…。


クラスで再会した時は、とてもビックリしたんだよ。


幸村君たちとも出会って…マネージャーになって欲しいと言われた時は、本当に嬉しくて。


何の力もない私だけど、精一杯皆を支えていきたいって思った。


…なのに、どうしてこんなことになっちゃったの?


「次8番、宍戸亮くん」


再び坂持の声が響き、宍戸は静かに席を立った。


「っ…亮…」


険しい顔で兵士からディパックを受け取る宍戸を、ユキはじっと見つめていた。


宍戸はディパックを肩に掛け、荷物を持つと出口へと歩き出した。


その時ふとユキと目が合い、宍戸は苦笑し出て行った。


「(きっと亮も混乱してるんだ…そうよね。こんな状態だもの。みんな…)」


宍戸が出て行ってから2分後、氷帝最後の鳳が呼ばれ、ずっと俯いたまま部屋を出て行った。


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