異変
…氷帝学園を出発してどれくらい経ったのか。
ふと見ると、斜め前の席のブンちゃんの体が半分通路に出ていた。
いつもは元気なブンちゃんが今はグッタリとしたまま、腕も力なく垂れている。
再びバスに乗ってしばらくは合宿について話していた幸村君や真田君たちも今は無言で…
皆シーンと静まり返っていた。
それこそ眠っているような…
「……」
ぼんやりとした目で窓の外を見る。
まだ明るい。
当然だ。
今はまだお昼前なのだから。
「…赤也?」
隣の赤也を見れば、先ほどからずっと俯いたまま一言も喋らない。
たいがい赤也と私とブンちゃんの三人は何か話してて、やかましい!と真田君に怒られるのに…
「…赤也、寝ちゃったの…?」
トンっと肩を叩いて声をかけるが返事はない。
顔を覗き込むと、目を閉じかすかに寝息をたてていた。
「……」
しばらく見ていたけれど、やっぱり眠っているみたいで反応はなかった。
「1時間くらい前から寝とるようじゃ」
ふと声がして顔を上げると、仁王がこちらに顔を向け赤也と私を見ていた。
「それに…」
そう言って仁王は体を少し傾け、私の視界に柳生君が入るようにした。
「…柳生君…も?」
「ああ。寝とる」
ぼんやりとした視界だが、柳生君は窓に寄りかかり、手に持った本も横に落ちていた。
紳士と呼ばれる柳生君が、人前で眠るなんてめったにあることじゃない。
「…珍…しい……」
そう言うのがやっとのくらい私の瞼は重く、だんだんと意識が遠のいていった。
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