異変

「とにかく一度榊先生に連絡してみよう」


幸村がそう言ったとき、ふと後ろから男の声がした。


「立海大附属中のテニス部の方々ですね?」


「!?」


振り返ると、黒いスーツを着た若い男が立っていた。


「はい…そうですけど」


訝しげに男を見つつ、幸村が答えると、男は一礼して言った。


「合宿の関係者の伊丹と申します。少々変更がありまして、立海大附属中の皆さんはこのまま合宿所へ向かって頂きます」


「え…」


突然のことに皆茫然とする。


「あの…氷帝のテニス部の方達と一緒に行く約束をしているんですが」


「氷帝学園の方々には、先に合宿所へ出発して頂きました」


「!、じゃあお兄…跡部景吾達は、合宿所にいるんですか?」


「はい」


「……」


まだ納得が出来ないが、男の言っていることに嘘があるとも思えない。


本当…なのだろうか?


「では急ぎ合宿所へお連れ致します。バスにお乗り下さい」


「……」


皆どこか不信感を抱いていたが、男の有無を言わせない威圧感のある声に、従うざる得なかった。


「お兄ちゃん…」


バスに乗る直前、ユキは俯きながらそうポツリと呟いた。


6/10

prev / next
[ BackTOPしおりを挟む ] 
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -