異変
「とにかく一度榊先生に連絡してみよう」
幸村がそう言ったとき、ふと後ろから男の声がした。
「立海大附属中のテニス部の方々ですね?」
「!?」
振り返ると、黒いスーツを着た若い男が立っていた。
「はい…そうですけど」
訝しげに男を見つつ、幸村が答えると、男は一礼して言った。
「合宿の関係者の伊丹と申します。少々変更がありまして、立海大附属中の皆さんはこのまま合宿所へ向かって頂きます」
「え…」
突然のことに皆茫然とする。
「あの…氷帝のテニス部の方達と一緒に行く約束をしているんですが」
「氷帝学園の方々には、先に合宿所へ出発して頂きました」
「!、じゃあお兄…跡部景吾達は、合宿所にいるんですか?」
「はい」
「……」
まだ納得が出来ないが、男の言っていることに嘘があるとも思えない。
本当…なのだろうか?
「では急ぎ合宿所へお連れ致します。バスにお乗り下さい」
「……」
皆どこか不信感を抱いていたが、男の有無を言わせない威圧感のある声に、従うざる得なかった。
「お兄ちゃん…」
バスに乗る直前、ユキは俯きながらそうポツリと呟いた。
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