イッショウケンメイ

物心がつく前から、雪男と燐はいつも一緒だった。
双子だから、どこに行くときも一緒で。それが幼い雪男は嬉しかった。
けれども、いつからだろう。
雪男は燐に対して、ただ好きだという感情だけではなくなっていた。
雪男は燐を愛してる。大切な、たった一人の半身だ。
神や道徳的に許されない欲を燐に抱いている。
けれども、同じくらい妬ましく思っていた。

「なあ雪男、夕飯何食いたい?」

無邪気な顔で尋ねてくる燐が愛しい。
けれども、何も知らないで暢気なことを、と思うときもある。
燐は自分がサタンの落胤だと知らない。
知らせないようにしているのは、雪男と獅郎だ。

「兄さんは何が食べたいの?」
「俺?そりゃ肉だろ、肉!」
「じゃあそれでいいよ」

穏やかな笑みを浮かべる自分を、雪男はどこか遠いところから眺めている気分になった。
大切な存在だ。それこそ、何よりも。
燐を守るというのが、雪男の存在証明にも近い。
けれども、胸の内に燻ぶる二つの炎が、雪男を激しく焼く。

「馬鹿、お前の食いたいもん聞いてるんだろ」
「え?」
「何食いたい?刺身にするか?」

きょとんとした顔で雪男が見つめれば、燐はにんまり笑う。
敵わないな、と思ってしまうのは燐がこういうところがあるからだろう。
だから妬ましいと思う反面、愛しくて堪らないのだろう。

「じゃあそうしてもらおうかな」
「おう!うまいもん食わしてやるからな」
「ありがとう、兄さん」
「お前はいつも頑張ってんだから、ご褒美だっつの」

そう言って笑う燐がいるから、雪男は何があっても護りたいと思うのだろう。
好きだよ、と音に出さずに唇を動かすと、雪男は笑う。作り物でない笑顔で。


おわり


最近の雪男を思うとこんなんばかりになります。
雪男好きだ。


11.09.24


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