memo
愛しているから
2011/06/03 00:09
――僕は兄さんが好きだ。
そう自覚したのはいつだったろうか。もうずっと、それこそ物心ついた頃には似たような感情を持っていたような気がする。
机に向かう燐を横目に、雪男はため息を吐いた。
祓魔塾で出した課題と、授業で出た宿題を前に、かれこれ三十分は唸っている。
「ぐぬぬぬぬぬぬ……」
大方、授業中に寝ていたのだろう。そうでなければ、あんなに悩む必要はない。さっきちらっと見たけれど、基礎中の基礎だ。
「兄さん、あとどれくらいそうしてるつもり?」
「そうだ!おい、雪男!」
「教えろって?」
「おうよ!」
ぱぁ、と嬉しそうに見上げてくる燐に、雪男は呆れたようにため息を吐く。
可愛いな、と思ってしまうのは、惚れた弱みか。ただ、講師をしている以上、宿題を丸々写させるような真似はできない。
「答えを聞くのと、教えるのは意味が違うんだからね?まったく、しょうがないなぁ……」
「愛してるぜ、雪男!」
「はいはい、僕も愛してるよ」
結局のところ、雪男は燐に甘いのだ。愛しているから。
寮での一コマ的な。
ちなみに燐に深い意味はありません(笑)
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