「あ、エレン。お疲れ」
「ああ、お疲れ様です」
部屋に入ってきたのはノエルさんだった。ノエルさんは俺より5つくらい上で、よく清掃場所や訓練班が被るので比較的親しい部類の先輩だった。薄茶の髪と、白い肌。一般女性よりは太いだろうけど、兵士にしてはやや細い腕。快活とまではいかないが気さくで明るい。だけど身長はやたらと高くて、俺より10センチくらい高い。正直、この点ともう一つの案件においては辟易していた。だって、好きな女より背が低いなんて情けない。
そう、俺はこの先輩に惚れていたのだった。
「そういや今日ベルトルト見てない?」
「いや、まだ見てないですね」
はじまった、と内心毒づく。辟易している案件のもうひとつがこれだった。
「えーまだ今日ライナーもベルトルトも団長も見かけてないしミケさんにもあってないよー!! 助けてエレン」
「俺に言わないでくださいよー! 探しに行ったらいいじゃないですか」
そう、ノエルさんはライナーとか団長とか、がっちりしてるというか、厳ついというか、所謂男性ホルモンの多そうな男が好きなのだった。特に好きなタイプは寝起きで髭が濃いエルヴィン団長(んなもんどこで拝見したんだ)。特別厳つくはないが、やたら背のでかいベルトルトもそれに含まれる。
「はあ…たまにはライナーと訓練被りたいよ」
「訓練以外で会うとこから始めてみたらいいじゃないですか」
「わかってないな、エレンは。訓練中にこそ会わなくちゃダメだよ。あの筋肉がしなやかに動くところ…はあ…」
でも日常のなかで見え隠れする筋肉ってのもいいよね! とのたまうノエルさんを尻目にため息をつく。なんなんだほんとに。そんな心境など知らず、ノエルさんは俺の腕をとる。小さくて細い手指が、手首に絡まる。
「それにしてもエレンは細いねえ、ご飯食べられてる?」
「…食べてますよ」
「エレンは昔から小柄だからなあ。成長を見守る姉の気持ちだよ」
このもやしっ子め! と言いながら脇腹を叩くノエルさんの言葉に凹む。姉て。弟なのか俺は。そんな俺を尻目に、ノエルさんは追い打ちをかける。
「世話の焼けるかわいい弟、うん、いいね」
「俺、そんなにダメですかね」
「子供のうちは手がかかるくらいのほうがいいよ」
「ライナーとかベルトルトとかは」
「あの2人は少し別格だなあ。頭も切れるし、実技も問題ない。からだづくりもそうだよ。エレンは、」
「…っ、俺、アンタの前じゃ男ですらないんですか!?」
頭の中で何かが爆発するのと、俺が立ち上がるのはほぼ一緒だった。そのままノエルさんに詰め寄り、壁際に追い詰めた。顔の両脇に手をついて、 腕の檻に閉じ込める。
「な、何怒ってんのエレン」
「確かにベルトルトもライナーもすげえよ、頭もいいし実技もばっちりだ、確かにかっけえよ、でかいし、筋肉あるし」
「…、」
「ノエルさん、俺だって男なんですよ」
「し、知ってるよ」
「知ってるけどわかってねえよ」
困惑した様子のノエルさんの首筋に顔を埋める。女の香りだった。慌てて引き剥がそうとしてくる腕を掴み直して、怯える瞳と目を合わせて、唇に噛み付く。小さく悲鳴が漏れた。抵抗が緩んだのをいいことに、シャツのボタンをいくつか外す。無理やりシャツをどかせば、立体起動のベルトが肌に食い込んだ。これ、赤くなっちゃうだろうな。
「ちょっと待って、エレン!」
「嫌ですよ。ノエルさん、わかってないもん」
俺のシャツを握りしめて、縋るようにするノエルさんの脚の間に膝を入れた。まだ、嘘だって思ってる。止めてくれると思ってる。でも無理なんですよ、俺も男だから。残りのボタンを外せば、下着があらわになる。ベルトがちょうど胸の上にあって邪魔だった。他の部位のベルトを引っ張れば、胸のベルトが緩くなる。それを下に引けば、ちょうど胸の下におさまった。ベルトのせいで上げられた胸が、綺麗に上を向いた。
「えっろ、」
もう止まらない。そのまま突起にキスをして口に含む。コロコロと転がせば、かたくなるのがわかった。その反応に気を良くして、ふとももに手を滑らせる。スラックス越しにびくりと震えるのを感じる。
「や、エレン、やめてっ…てば」
「そんなに嫌でもないくせに。もう濡れてるんじゃないですか」
ベルトを緩めて、スラックスを脱がす。抵抗がほとんどないのがいい証拠だった。下着越しにさわれば、指先にしっとりした感触。瞳を覗き込みながらそっと擦ってやれば、ぎゅっと目を瞑って顔を逸らす。拒否されているみたいで、なんとなく不愉快だった。
「チッ、こっち見てくださいよ、ノエルさん」
「や、やだ…!」
「なんでですか? 俺だからですか?」
「ち、ちが」
「ベルトルトとか団長だったら喜んで足開いたんですか?」
「ちがっ…、ひゃあ…!」
下着を片側に寄せて、指を滑り込ませる。肉芽を撫でて、擦ってやれば簡単に肥大した。変わらず俺のシャツを掴む腕を取り、壁に押し付けてまた唇を塞ぐ。逃げる舌を追いかけて絡めとる。震える睫毛を至近距離で見ながら、ノエルさんの腰に自分のそれを押し付けた。怯えたように目を見開く彼女の表情を堪能。ぞくぞくして堪らない。
「や、やだエレン、待って!」
「待ちませんよ。どうせ、団長には可愛がってもらってんでしょ。一回くらいいいじゃん」
「違うの、エレンってば! そうじゃないの…!」
俺の腕と胸を懸命に押し返すノエルさんは違う違うと喚きながら、俺をにらんだ。薄らと浮かぶ涙が綺麗で、本当に食べてしまいたくなる。
「団長もベルトルトもライナーも好きだけど! そういうことじゃないの!」
「はあ?」
「だから、エレンとは、こんなんじゃなくて! ちゃんと、ちゃんと…したいんだよ」
だから酷くしないで、そう呟く。瞬きをすると同時に、涙が零れた。いまいち話が掴めなくて、俺も混乱する。
「ちゃんとってなんですか?」
「、なんでわたしとエレンがよく訓練かぶるのか知らないでしょ? わたしが頼んでるからだよ」
「は?」
「なんでわたしがベルトルトのとこもライナーのとこも行かないでエレンに構ってるか、知らないでしょ!」
堰を切ったように零れるノエルさんに驚いて、掴んでいた腕を離す。なんでこの人、こんなに怒ってるんだ。
「なんでこういうことすんのかなあっ、せっかく、弟だと思って誤魔化してたのに!」
「す、すいません」
思わず条件反射で謝れば、ノエルさんはまた俺のことを睨んだ。すん、鼻を啜る音が部屋に響く。
「…すき、なんだよ」
「え? なんですか?」
「すき、なんだよ、エレン…、もう、誤魔化せないよ、責任とってよ…」
ぐすぐすと泣きながら抱きついてくるノエルさんが、俺の首筋にそっと唇を寄せる。シャツ越しに、ふくらみが二つ触れるのを感じて、息を飲んだ。顔を上げたノエルさんの瞳を覗いた。
「エレン、優しくして」
壁に手をついたカーヤさんに覆い被さりながら、腰を動かす。きゅうきゅうと締まるナカが熱くて、さっきからもういっぱいいっぱいだ。いいところを擦ってやれば、一際高い声が上がる。嫌々言ってた時とは大違いで、甘くて、やらしい声で。
「ん、あっ…! エレ、ン…! そこばっか、やだぁ…!」
「嫌じゃない、んだろ…!」
ぐりぐりと押し付けながら、腕を伸ばして胸を揉みしだく。もう片方の腕は前に伸ばして、肉芽をめちゃくちゃに擦ってやった。嬌声が上がって止まらなくて、腰の動きも手の動きも止めてやれなかった。気持ちいいのか、しなる背中に噛み付けばナカがびくびくと収縮して、悲鳴のような声をあげながらノエルさんはイったようだった。強く締められて、限界だった俺もギリギリで引き抜いてノエルさんの背中に出した。壁伝いにずるずると脱力するノエルさんを、壁を背にして座らせた。
「…えっろ」
「こんなの、団長にだって見せたことないから」
はあーと深いため息。ノエルさんは俺の頬に手を添えると、小さくキスをしてくれた。
「あの、」
「いい年して若い子に惚れちゃうとか、ダサすぎでしょ…なんのために頑張って…自分誤魔化してたのか」
「え、ずっと俺のこと好きだったんですか!?」
「好きにならないように努力してたんだっつーの!」
軽く俺を小突いたノエルさんが、ちょっと恥ずかしそうに笑った。なんだ、この人俺のこと好きだったのか。今までのことを思い返して、俺もちょっと笑った。俺のことを好きなのと別ベクトルにベルトルトたちのことも好きなのも本当で、仕置と称して一晩中事に及んだのは、また別の話。
ノーエントリー!