*limit overの2人。多分ifストーリー。


「…なんで兵士長なんかになっちまったんだろうな」
「……何、急に」

消灯して随分経つというのに、リヴァイの寝息がしないから気にはなっていた。やがて寝返りを打つ布擦れの音がして、彼が表情の読めない声音でぼそりと呟いた。

「俺は兵士長だろ」
「そうね」
「兵長だ」
「…知ってるけども」
「生き残る必要がある」

昔は楽だったんだけどな、さも現状が面倒だと言いたげにそう言ってはいるが、おそらく本心はそうではないと察して、次の言葉をじっと待つ。

「…わたし、眠いなあ」
「…は、そうだな」

軽く笑って、リヴァイが溜息をついた。

「…俺は生き残らなけりゃならない」

兵士長なんて肩書きなんて本当はいらなかった。肩書きだけだったら今すぐにでも誰かに投げて寄越したい。俺は生き残らなけりゃならない。兵士長という名のついた人類が、簡単に死ぬことは許されない。他の兵士より先に死んではならない。最後まで生きて、兵士を導かなくてはならない。導くために生き残らなければならない。例え誰かを犠牲にしても。俺は誰かを犠牲にしてまで生きたいわけじゃなかった。だけど今ではそうもいかない。俺は生きることを強いられている。生き延びることを強いられている。

「人類のために身を捧げること、他人のために身を捧げること…でけえ違いなんてありゃしねえ、」
「目の前のたったひとりの話、と、解釈していいのかしら」

リヴァイは静かに身体を起こした。ベッドの中から彼の背中をぼうと見る。部屋を突き刺す月明かりがその背中を少しだけ照らしていた。

「…誰かを守って死にてえな」
「…」
「いつか死ぬとき、誰かたった一人、だれかひとりのために死ねたらそれでいいんだ」
「…リヴァイ」
「…俺は今、人類の期待を裏切ってる」
「リヴァイ」
「…なあ、」


俺が死ぬそのとき、誰かたったひとり、そのたったひとりが、お前だったらいいのにって、


そう呟いた彼のシャツに手を伸ばして、思い切り引っ張って、ベッドの中に連れ戻して抱き締めた。強く抱き締めた。リヴァイが腕のやり場に困っているのを感じた。無視した。やがてその腕が、おそるおそるわたしを抱いた。
わたしだって思ってるよ。あなたが昔のように、自分の身など省みずに駆けていたあの日々を。他人のために怪我をしていたあの日々を。他人のために全速力で駆けていたあの日々を。もう戻れないあの日々を。
あなたに庇われるような無様な真似はしたくないししないと思うけど、だけどリヴァイ、あなたが息を止めるそのとき、傍にいるのがわたしだったらって、ずっと、ずっと思ってるんだよ。



「…リヴァイ、わたし眠い」
「………ああ、寝ろ」


全人類の希望と期待を背負わされた彼が、その荷を投げやりに放ったこの夜のことを、わたしは墓まで持っていく。
いつだってあなたのたったひとりでいたいと、ずっと思っているのに、今日もあなたには言えないままなのだ。






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