次の壁外調査の日程が決まったのはつい最近だった。決行は来週。予想よりも早いその日に、団長は勿論、我々専属班も普段より無茶な労働を強いられていた。とは言うが、わたしもリュウトも実際に戦地に赴くわけではない。わたしたちは仲間が無事に戦果を上げることが出来るよう、最大限のサポートをすることが役目なのだ。

「カーヤ、この資料を各分隊長に配布してくれ、急ぎの伝令だ」
「ハッ」

慌ただしい執務室の中では、少し疲弊した様子のエルヴィン団長が仕事をしている。リヴァイ兵長は訓練所で陣形の最終確認と、その指導に出ている。今は必要ないからエルヴィンと行動を共にせよというのはその兵長からの命令だ。団長から渡された資料を抱え、分隊長たちを探しに行く。ほとんどはおそらく訓練所にいるだろう。足を向けたところで、思い浮かぶのは兵長の顔。急いで兵長の部屋へと走り、埃ひとつないような部屋に佇むチェストを開けた。綺麗に折りたたまれたハンカチが、これまた綺麗に整頓されて入っている。わたしは2枚ほど取り出した。



「動きが遅い! もっと迅速に行動しろ! 壁外でもチンタラ走るつもりかてめえらは!」

訓練所の乗馬場からは兵長の怒声が聞こえてくる。おそらく班ごとに動きをチェックしているのだろうが、流石というか容赦がない。日がないのだから仕方のない話だ。走って向かえば、気づいたらしいミケさんが振り向く。彼の行動を追って、ハンジさんも振り向いた。

「あれ、どうしたのカーヤ」
「ええ、団長からこれを。急ぎだそうです」

ミケさんとハンジさんに資料を渡し、やや離れたところで怒鳴っている兵長に駆け寄る。

「兵長!」
「…なんだ、お前か」
「これエルヴィン団長からです。急ぎの伝令だと」
「ご苦労」

資料を手渡して、兵長の顔色を伺う。悪いわけではないが、やはり普段より良くなかった。

「あとこれ、新しいハンカチ持ってきましたので。使ったものは回収致します」
「ああ、助かる」

軽く会釈して、踵を返す。分隊長二人にも会釈をして、通り過ぎようとしたところでハンジさんに呼び止められた。

「さっき渡してたのってハンカチ? マメだねぇ」
「ええ。兵長、今日は人のブレードをよく触っているようでしたので。グリップの握り方も指導されてましたよね? 手を取っているのが見えたので、それで」
「見てたの? 君は執務室にいたんじゃなかった?」
「執務室にいましたけど…見えますよ? 兵長くらい」

それでは、と言って今度こそ去っていくカーヤを見送りながら、ハンジは渋い顔で腕を組んだ。

「見えますよって…今日の執務室、カーテンしまってるじゃん」
「…リヴァイは彼女にどんな教育をしているんだろうな」


専属侍女となって二月。彼女の洞察眼が地味に恐ろしいことになってきていることに、ハンジは小さく溜息をついた。



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