「…わりとまともになってきたな」
「ありがとうございます」

兵長専属班に所属してから一月経ち、書類整理や大まかな掃除くらいなら一発で兵長の丸マークを貰える用になってきた。と言っても兵長の太鼓判には程遠く、良くて及第点と言ったところだ。それでも他の兵士よりはよっぽどやれるような気がする。訓練も碌にせずに雑務だけしていたら当たり前だ。

「兵長、私は訓練に出なくていいんでしょうか」
「…侍女だろ? 必要最低限でいい」
「しかし、緊急に戦力が必要になる場合もあるかと」
「エルヴィンが侍女業に専念しろと言ったんだ、それでいいだろう。整備班や救護班だって、そんなに訓練には出てないはずだ」

確かに団長秘書だった頃にも、あまり激しい訓練はしていたわけではない。あくまで秘書であり、事務仕事や兵団内部のサポートが本業であった。しかし、常に戦力不足の調査兵団の所属である以上、それでいいのかと思わなくもない。団長の計らいなら間違いはないのかもしれないが。

「それより、そろそろ掃除だけじゃなくて俺の身の回りもなんとかして欲しいんだが。掃除の負担が若干減ったくらいで、とても侍女がついてる気分じゃねえ」
「あぁ、そうですね」

事実上、今兵長はわたしの教育係のようなものだ。しかも掃除専門の。微力ながらわたしが掃除をすることで兵長の負担が減っているのは確かだろうが、それでも現状、彼曰く「自分でやったほうが早く終わる」だ。肝心の兵長の身辺のお世話にはまだあまり触れていない。それこそ、会議のときに呼ばれてお茶を淹れたり、事務作業のときに同室で待機したり、その程度だ。団長秘書だったときとあまり変わらない、潔癖気味な兵士長殿が事ある毎に不快にならないよう心を砕くだけの仕事。

「しかし、掃除に行かせるとお前が何処にいるのかわからなくて不便だな。ハンジに何か作らせるか」
「何か?」
「俺が呼んだらお前がすぐわかるような装置だ」


呼んですぐ来なきゃ意味ねえが、掃除をおろそかにされるのも困るんだと、腕を組みながら言う兵長を半目で眺めた。
団長、わたしは兵士に戻れるんでしょうか。



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