「たとえばの話なんだが、」
「俺かブラッキーか、どっちか選べっていったらどうする?」
「…は?」
「で、選ばなかった方はもう二度と会えないと仮定する」
急に何を言い出すんだ、と怪訝な顔をしながら考えるそぶりを見せるリオを見ながら、少し悲しくなる自分がいた。
リオがブラッキーを溺愛しているのは否定しようがない事実で、それと自分を比較するのは馬鹿げている。
これはある種の賭けみたいなもんなんだろうと思った。
「私が同じこときいたらどうするのよ?」
「お前かレントラーかって?」
「うん」
「聞きたい?」
「…答え、出てるんだ」
「まあ、即決だ」
眉が潜められる。
「レントラーでしょ?」
ふいっ、とそっぽを向きながら投げやりに言われたその言葉が予想通りで、きっとそれはリオが多少なりとも俺とブラッキーの間で揺れているということを表していた、と思う。
「いや、お前だけど」
凄い勢いでリオが振り返る。その顔は驚愕と呆れに満ちていた。
「なんで!?レントラーは!?」
「え、なんでって言われても、」
「子供の頃から一緒にいたじゃない!どうしてそんなこと言うのよ!」
怒声が部屋に響く。結構怒ってると思う。
子供の頃からという判断基準でいったらリオも同じ条件付けであるはずなのだが、本人はわかっているのだろうか。
「落ち着け、そう怒鳴るなよ」
手のひらをひらひらと振りながらあくまで冷静を装って言えば平手が飛んできた。正直痛い。
「痛いんですけど」
「見損なった」
うつむきながらリオはそう言った。俺の推測が間違ってなければ、自分はブラッキーと俺で迷っているのに俺が即決でリオを選んでしまったことに何か不満があるということになる。多分リオの中には何かジレンマ的なものが存在していて、どっちかを選ぶということは難しい、ということになる。つまり俺にも多少なりとも、愛着はあるということなのだ。
賭けには、勝ったのかもしれない。
王子様の大博打
(そこから先に進めない、なんて)
(俺も大概だと思うけど)