「みてーデンジ!イーブイ!イーブイだよー!」
「おお」


俺の苦悩ともいえない苦悩が始まったあの日を、俺は今でも覚えている。
リオの腕に抱かれたイーブイが、こころなしか生意気そうに鳴いた。




リオが自分のポケモン、と公言したポケモンはおそらくこいつが初めてだったと思う。
他のポケモンを持っていなかったわけじゃないが、当時の彼女の手持ちは親御さんのピジョット1匹だったので、そういった意味では本当のリオのポケモンはイーブイが一番最初だった。
自分が手に入れた初めてのポケモン。そりゃあ愛着も湧くだろう、溺愛っぷりは異常だった。
俺の両親もリオの両親もポケモントレーナーだったり、仕事があったりで、お互いにあまり親といた思い出は無い。俺はリオの両親を見たことがない。もちろんこの年になってもだ。


それまで夜になると、ときどき俺の家まで遊びに来て一緒に寝たりすることが度々あったのだが、イーブイがリオの元にやってきてからはその回数がめっきり減った。
俺がよくコリンクやサンダースを抱いて寝ていたから、それを真似するようになったから来なくなったんだな、と子供心に推測したのを覚えている。
それもなんだか、面白くないような気がしていたのだ。思えばこの頃から。



このイーブイがブラッキーになってから、それは確信へと変わる。
こいつの進化の場面には立ち会った。げっこうポケモンの名に似つかわしい、聖夜のことだった気がする。




姫の隣には忠実なる騎士
(あいつの隣には俺がいたのにな)
(思ってても認めなかった、子供なりのプライドだった)



でも、そんなプライドはもう捨ててもいいかなって、最近は思ってるんだ。






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