「リオー」
「…なによ」
「寒い」
「誰のせいだかわかってる?」
「ごめん」
シンオウ地方は寒い。
それは太陽の街と呼ばれるこのナギサも同じことだった。
今は真冬、霜は降りるし雪だって当たり前のように降る。
そんな中、毎度のことながら街のジムリーダーが町中の電源を落としてしまったのだった。
「こんなに寒いのに停電とか…冬は特に気をつけてって何度も言ったのに」
「だから悪かったって」
ぶるっ、と体を震わせ、自分を包んでいる毛布をもう一度体に巻き付けなおす。
ポケモンたちを出してくっついていれば暖かいかもしれないが、この寒い中に無理はさせられない。
つい最近デンジが風邪を完治させたばかりだったのだが、自分のポケモンが同じように苦しい思いをするのは避けたかった。
「…寒い」
どちらともなく呟いた。吐いた息の白さが憎い。
停電してから数時間、電力の回復はまだだった。
「遅いな、今日の復旧…」
自分がやらかしたところはもう大丈夫なように直しておいたので、電気が来るのを待つだけなのだが、どうも今日は来るのが遅い。
そうだね、とかなんとか返してくるであろうリオの反応を待った。…が、返答がない。
「…リオ?」
少しあいていた距離を詰めて、リオの顔を覗き込む。
「…おいおい、マジかよ」
無防備に眠ってしまっていた。
寝るなー寝たら死ぬぞーというベタな展開が脳裏をよぎったが、それを言うほどここは寒くない。
だからといって寝かせておくのも体が冷えるだろうし、でも寝せておいた方が寒い思いをしなくていい気がする。
少し迷った挙句、暖かければいいんだという結論にたどり着いた。善は急げというべきか、寝ているリオを起こさないようにそっと引き寄せて抱きしめる。
(…あ、思ってたよりあったけえ)
なんだ最初からこうしてればよかったじゃん、とか思ったときだった。
パァン!
「…」
デンジは思った。こいつのことを忘れていた、と。
思い切り殴られた鼻を押さえつつ、戦闘態勢に入った彼を見てデンジは溜息をついた。
君は少々目聡すぎる
(お前になんか任せられるか)
(どうやら勝ち目はなさそうだ)