日が暮れてきた。
崖をよじ登りはじめてかなり経つ。
ちらりと下を見てみれば、ブラッキーはまだ崖下でうろうろとしていた。一気に駆け上れそうなところを探しているらしい。
オーバに連絡してフワライドを借りてもよかったのだが、挑戦者でも来ているのか一向に連絡がつかない。肝心なときに本当に何の役にも立たない野郎だ。


幾度もポケモンたちが往復したのだろう、ロッククライムの通り道となっているその場所を着実に一歩ずつ登っていく。あと数メートル、それだけ登れば崖の上だ。
目撃談から考えても、この上にリオがいることは間違いない。見つけて一発怒ってやらないと気がすまない。リオも、レントラーも。心配させやがって。





「よっ…と、」


勢いをつけて、最後の段に足をかけ、崖の上へと這い出る。立ち上がって埃を叩き落としていれば、背後でタン、とやわらかい足音がした。ブラッキーが着地した音だろう。
二人でぐるりと周囲を見渡す。一面に小さな花が生い茂っているその様は、どこか神々しくもあったし、それでいて寒い地方であるこの場所にはあまり似つかわしく無い情景であるのも確かだった。


「しっかし、なんだこの辺鄙な場所は。こんなところあったか?」
『…さあ』
「とりあえずぐるっと一周してみるか。真ん中のこれは…湖か、落ちないように気をつけろよ」


半周しながら、ところどころにある草むらの中も覗いて見る。ムクバードやビーダルなど、よくいるポケモンたちの姿と、ヨマワルやサマヨールと言った変わったポケモンも見受けられる。


「こんなところにゴーストタイプのポケモンが、ねえ。初めて知ったな…、おい、ブラッキー! あれ見ろよ」
『あれ…マスター!?』


下の湖のほとりに、小さな陸地がある。そこにぼうっと立っているのは、紛れも無くリオだった。
近寄って、聞こえるように名前を呼ぶ。登ってくるときと同じようにロッククライムの跡地沿いに下りる。下りてすぐ振り返って見たリオは背中をこちらに向けていて、表情を伺うことは出来ない。
俺が地面に足をつけたのを見計らって、ブラッキーも崖を滑り降りてくる。



「おい、何やってたんだよ!」


リオに声をかけながら、周りを見渡す。一緒だと思っていたレントラーがいない。



「はは、来たんだ。遅かったね」
「はあ? 何言ってんだよ…こんな変な場所にいやがって。帰るぞ」


思わず眉間に皺を寄せながら言って、近づく。近づいて振り向かせようと腕を伸ばしたところで、リオが突然、勢いよくこちらを振り返った。




『…うわっ!?』


背後でブラッキーの驚いたような声がした。
振り返ればそこには、紛れもなく俺のレントラー。不意を付かれたブラッキーは、突然の衝撃に受身を取ることも出来ずに無様に数メートル転がった。
突然の事態に驚きを隠せない。ついでに言うなら困惑していた。身体を捻って、リオの顔を見る。身体をこちらに向けても顔は俯いたままで、どんな表情をしているのかはわからなかった。
あたりがゆっくりと暗闇に染まっていく。陽が、沈む。




「うん、そうだね。遅かった。遅かったんだよ、デンジ」
「リオ、何を、」










空っぽの城内で






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