橋の全長の約半分のところで崩れたままになっている橋のふちまで来て、向こう岸ををぼうっと眺める。
向こう岸にはとても届きそうにない。




「私ね、昔本で読んだことあるんだけど」

隣でじっと座るレントラーが顔を向けるのを視界の隅で確認する。


「食べたポケモンの骨を綺麗に洗ってここからおくると、帰ってくるんだって」

骨、のあたりでぎくりとしたレントラーを笑いながら頭を撫でる。



「本の話だってば。神話だったかなあ…昔はちょっと怖かったっけ。…どっちにしても、心配しなくたって誰もレントラーのことを食べたりなんてしないよ」


ぐるぐる、と喉を鳴らすレントラーにの隣に座って寄りかかる。目をつむると、冷たい風が髪をさらっていく感覚がよくわかった。








わかってた。わかってたよ、ただ気づかないふりをしてただけ。
数年離れてたって、それを補えるくらいずっと一緒にいたんだから。

でもそれを認めてしまうことが怖いのも本当。
旅している間に私が他の人と仲良くなったように、私がいない間に親しくなった女の子がいてもおかしくない。

わかってはいるんだ、自分の気持ち。デンジだってきっと同じはず、なんだと思う。
確証はない。女の勘。こんなときだけ女になるのは卑怯なことかな、確かめる勇気が無いことを女だからと言ってしまうのはいけないことかな。








『ああ、これからも一緒だ』



それは幼馴染としてなの? それとも同じ町に住むトレーナーとしてなの? 女としてなの?
自分の勘違いかもしれない。ただの自意識過剰かもしれない。だからこそ怖いんだ。
気づかないふりをしたままここまで来てしまったんだ。あなたが、あまりにも近かったから。

難しいことなんて考えたりせずに、ただ2人きりで笑い合えてた日々が、今は遠かった。





私は、いつまでデンジのそばにいられるんだろう。









気がつかなければ、よかったのに
(疑問なんて生まれないくらい、ずっとそばにいられたらよかったのに)






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