ジムを急いで閉めて、ブラッキーと2人で外に飛び出す。
ブラッキーは近くのポケモンたち、俺は勿論街の奴らに聞き込みをして回った。
結果としてわかったことは2つある。
まず1つは、やはりレントラーとリオは一緒にいるということ、2つ目はかなり軽装であったということ。
軽装ということはあまり遠出はしていないはず。まるで普通に散歩をしているかのようだと、町の人も言っていた。
あれだけ聞いて回ったのに情報量はとても少なく、その事実は同時にリオとレントラーの行動がとても迅速だったことを意味する。
「やっぱり、ただ出かけただけなんじゃねーの」
『だから、僕に声かけないで出かけるのがありえないんだって! 部屋にメモも無かったじゃないか!』
「…、」
ブラッキーの言うことももっともだった。そもそもリオは俺の部屋でごろごろだらだらとしていたのだから、出かけるなら書置きがあってもおかしくない。
というか普段はそうしているから、今こんなことになっているわけで。
『それに、なんだか嫌な予感がするんだ』
落ち着きなくその場をうろうろと動き回るブラッキーを見ながら、こいつが俺の手前、ここまで落ち着き無くするのは確かに異常だと思った。
こいつは俺に弱みを見せまいとする。イーブイだった頃からそうだ。あくまでリオの、忠実で有能な、一番の騎士様であろうとするのだ。
その気持ちだけなら俺は尊敬したいとも思う。でも逆に考えれば、「ポケモンと人間」だからこそ抱くことが出来る感情なんじゃないか?
俺がもしそうあろうとしたところで、きっとリオはそんな俺を笑ってあしらうんだろう。だって俺たちは人間だから、同じ立場だから。
羨ましいよ、そこまで心酔して、そこまで愛して、それをなんの疑問も違和感もなく受け入れて享受して。お前も、リオも。
「ほんと、あなたは賢いわ…」
レントラーの背に跨って走って、たどり着いて目の前に広がったのは大きな泉。
人気も無い、どこか不気味さすら感じるこの場所。
それがここ、おくりのいずみだった。
『あいつはちゃんと汲んで行動してくれる』
デンジの言うとおりだった。レントラーは私の気持ちですらよく気づいて、わかって、汲んでくれる。きっとデンジの気持ちならそれ以上に。
だからこそなのだろう、見つかりにくいこの場所に連れてきたのは。
ここなら早々に見つかったりしない。見つけるのには苦労する。
ねえ、だから、信じさせてよ。レントラーじゃなくて、あんた自身の言葉を。気持ちを。
私のこと探して、ちゃんと見つけてくれるって。
王子の愛した君はいずこ
(もしあんたが私を見つけられたら、そのときは言ってあげたいなって)