「青いボスゴドラ、ねえ」

調べておく、そう言ったユズキは声を潜めて続けた。

「さっきのお嬢さんだけど」

「…レッドと鉢合わせするんじゃないか、だろ?」
「ああ、そうだ」

グリーンがまだジムを開けていないということもあり、セキエイリーグ本部の事務所へと戻ったユズキとグリーンは、先刻のボスゴドラについて話していた。それに続いて出た話題が、レッドだった。正直、ユーリがシロガネに行くと告げたときから懸念していたことだった。いるのだ、あの山に。かつてこの地で名を馳せ、自分を破ってチャンピオンになった男が。もうしばらく、グリーンは顔を見ていない。グリーンが定期的にユズキと連絡を取っているのは、ユズキにその男の生存確認をしてもらっているからだった。

シロガネ山はこのセキエイリーグの本部の管理下にある。その山に篭もっている以上、いくら最強と呼ばれる男と言えども、リーグ本部としては放っておけない。さらにトキワのジムリーダーからの頼みともあれば、お目付け役がいてもなんら不思議はなかった。そのお目付け役が、ユズキというわけである。

「今のレッドが、そう簡単に人の前に姿を現すとは思えない」

俺にだって顔見せねーんだぜ? そういうグリーンに、ユズキもそれもそうだと相槌を打った。しばらくピカチュウにしか会っていない。事前にヤミカラスに伝書を持たせ、訪問日を知らせているのだが、当日訪れてみると入り口にピカチュウが待機しているだけなのだ。ご丁寧にその日の日付を書いたメモを持って。

「今のレッドさんはちょっと不安定気味で危ないって言ってたのはお前だろう。どうしてユーリちゃんを行かせたのか、そろそろ聞いてもいいよな」
「俺はレッドもユーリも信じてる。…それだけだ」
「…それはどういった意味でだ」
「俺がいなくてもユーリはちゃんと成長して、ちゃんと一人でなんとかできるってこと」

それに、と続けたグリーンに、ユズキは複雑そうな表情を浮かべた。

「そりゃあぶねえとは思ったさ。そう思った俺自身のことも信用はしてる。だからといって…俺がレッドのこと信じなくて、他に誰が信じんだよ」

沈黙が訪れる。やがてそれは事務室にかかってきた電話の音によってかき消された。ユズキが席を立つ。

「…まるで保護者だな」
「ああ、自覚はしてる」

保護者なんだか親友なんだか。どっちにしろ気苦労が絶えないのには変わりないか、とユズキは苦笑して受話器を取る。数分後、呆れたような顔をしてユズキはグリーンに受話器を渡した。

「本当に苦労が絶えないなお前。責任重大だ」

グリーンが推薦して山に登ったトレーナー…つまりユーリのことだが…が山崩れを起こしたというクレームの電話だった。






「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -