ズザァ、と大きく地面を摩擦する音がした。ウインディが急停止した音だ。

「ごめんウインディ、急に」
「ガルル」

気にするな、という風にウインディは返事をした。彼の背に跨ったまま息をつく。勢いにまかせて一気に山を下ってきてしまった。以前壊してしまったこの1階エリアも随分と様変わりして、少しこざっぱりしたように思う。まあ、今までがゴツゴツしすぎていただけだとは思うけど。思っていたよりも工事は早く進んでいたらしい。ポケギアを見れば今日は日曜日。以前と同じようにぽっかりとあいた入り口を恐る恐るくぐれば、外には立て看板と「休工日」の張り紙があった。

「とりあえず詰所まで行こう、そしたら休憩。それでもいい?」

そういって顔下のウインディに話しかけようと覗き込めば、じっとこちらを見つめてくる彼と目が合った。

「…どうした?」

ふるふる、と首を横に振り、ウインディは走り出した。浮かべた笑顔に影を作ったままの主人を乗せて。


詰所で休憩している間に、グリーンに電話を入れた。ジムは有給を取るらしい。

「何もそこまでしなくたっていいのにねー」

パチン、とポケギアを閉めながら目の前に置かれた5つのボールを見る。そのうちの4つはいつものメンバー。もう一つは、自分の責任。赤いボールの中にある、1つだけの青いボールを手に取った。

「…君のこと、もっとわかってあげられたらいいのにね」

球体中央のスイッチを押してみる。反応はない。『彼』にはなかなか会えない。会ったときは大体自分も正気じゃないから、自分の仲間の枠にいながらも、分かり合うことは未だに出来ないままだった。

「…僕のせい、だもんね」

怒ってるんだね、そう一人ごちて、ユーリはボールをベルトにつけた。


「おかえり」
「はは、ただいま」

グリーンの手元でコーヒーメーカーがこぽこぽと音を立てる。若干の沈黙のあと、グリーンが口を開いた。

「…レッド、元気だったか?」
「元気だったよ」

コツン、とテーブルにソーサーが置かれる。続いてコーヒーの入ったカップが置かれる。ユーリは2つ角砂糖をつまむと、ぽとんと液体の中に落とした。沈黙は続く。グリーンも椅子を引いてそこに座った。

「……、聞きたいこと、あるだろ。俺に」
「…うん」

相手がレッドだからな、苦労したろ、そう言って少し笑って見せるグリーンに笑い返して、ユーリはコーヒーを啜った。甘すぎる。






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