「私のターン。ドロー」

その声とともに、デッキからカードが1枚、彼の右手の中に差し込まれていく。ドローした左手の指でそのまま右手の手札から別のカードを実に優雅に、かつなめらかに抜き取り、人差し指を中指で器用に挟み込んだそのカードをその場でくるりと回転させて私に見せ付けた。長い指に挟まれたそのカードが、蛍光灯の光を反射する。

「速攻魔法発動、異次元からの埋葬」

そしてそのままカードを翻し、卓上に広げられたプレイマットにぱしり、と配置する。
カードの効果で除外されたモンスターを墓地に戻すのにまた、除外していたカードを優雅に拾い上げて墓地ゾーンへと落とした。その一連の流れをぼうっと眺めて、気がつけば自分のターンになっていたことに気づく。ぼうっとしていた間に何が起きたのか、なにやら酷く劣勢だ。

「あ、あれ?」
「間抜け面して人の手を見ているからだ。デュエリストとして情けない」
「誰が間抜け面だって?」
「即座に反応するあたり、自覚があると見える」
「うるさいなあ。それにお前の手なんて見てない」
「見ていただろう」
「見てないよ」

パラドックスはカードを持っていない左手を不意に持ち上げ、ひらひらと手を振った。長い指も一緒に揺れる。私は肩を竦めて見せた。

「ドロー、」

人差し指と中指をデッキに置き、滑らすようにカードを取る。そのまま先ほどの彼のように手札を2本の指で挟み、プレイマットの上に置こうとして………落とした。

「…」
「マ、マシュマロンを…………攻撃表示で召還」
「何をしてるんだ?」
「い、いや別に!」

パラドックスははあ、と大きく溜息をついて、手札をフィールドの上に投げ出した。

「やめだ、やめ。リオも意地を張ってないで言えばいいではないか」
「何をだよ」
「私のカードの扱い方をずっと見ていたのだろう」
「……」

バレていたのかという羞恥と、どこか愉快そうに口の端を吊るパラドックスの笑みに不快感。どうにか反撃してやろうと、手札をフィールドの端にまとめて置いて、頬杖をつきながら言い返す。

「そうだよ。見てたんだよ。お前がカードをあんまりヒラヒラヒラヒラするもんだから!」
「責任転嫁か。愚かなことだ」
「うるっさいな」

彼にしては珍しくにやにやと笑いながら、パラドックスはカードをゆっくりと拾い、それを私の目の前でちらつかせる。そしてくるりとカードを反転させる。慣れた手つきと、それを証明するカードの動きに反抗心が沸く。同じようにカードを持ち上げ、反転させようとするが、パラドックスと違い慣れない動作にぱさりとカードを取り落としてしまった。悔しくてもう一度カードを拾いあげれば、愉快そうに笑む彼と目が合う。目を逸らせばその瞬間、彼の右手が私の右手を掴んでまた私はカードを落とした。するり、とまるでカードを操るときのように軽やかに指が絡まり、手に力を入れたらいいのか抜けばいいのかわからなくなる。

「手ほどきをしてやろう。感謝するんだな」
「頼んでないし、お前に頼むくらいなら亮にでも頼むよ」
「…どうだか。あれだけ私の指を眺めていたくせによく言う」
「ちょ、おい待て、」

テーブルから身を乗り出そうとするパラドックスを静止すべく突き出した左手も、彼の左手に絡め取られる。そのままぐいと引かれれば、軽くぶつかる額と、至近距離に顔。


「今度からは指だけじゃなくて、私のこともちゃんと見ておくんだな」




ストップ、局部




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