私の幼馴染は馬鹿である。
昔から馬鹿だったけど、最近は本当に、馬鹿なんだなあと思い知らされることが多い。極めつけに今である。いつものようにさらっと、それでいて大真面目に放たれた彼の言葉に、私の思考は追いつかない。馬鹿の考えることはわからないのだ。

学校の屋上で彼が意識不明になって、ひょっこり帰ってきてから、もう随分になる。帰ってきてからは、すぐに転校してしまった転校生の女の子(私は彼が心配で、この転校生のことをよく覚えていない)のもとへよく遊びに行っているらしかった。彼の説明は俄かに信じ難かったが、彼が言うなら、ゲームの中に入り込んでいたというのもまあ、真実ではあるのだろうと思っている。結果が、現実に存在していた彼が交流できるはずのないその転校生の女の子との今の関係なのだから、疑っても仕方ない。

だから、このまま、その女の子と一緒になるんだろうと思っていた。私だってもう子供じゃない。彼にくっついて歩いていたわけでもないし、そんなもんだろうと思っていた。

「ああ…ごめんトキオ、私耳が遠くなったみたい」
「ええ!? ちゃんと聞いてろよー! ……だから、俺は、」


「君のことが、好きなんだ」


つい頭を抱える。
なんで急にそんなこと言い出すのかもわからないし、私が好きだというのもわからない。

「…どうしたの、急に」
「…今日、彩花ちゃんに告白されたんだ」
「はあ」

彩花。あの転校生の名前。告白された。正直、聞いてもあまり驚かなかった。だってトキオだって、しばらくは彩花ちゃん彩花ちゃんって言ってたんだから。

「よかったじゃない。可愛い子なんでしょ?」

幼馴染としては、彼にもとうとう春がきたかと思って喜ぶべきなんだろうと思った。

「ホッとしたわー、あんたにもそんな子がね…報告がいちいち遅いわよ、ホントはもっと前から両思いだったんで、」

「だから! ちゃんと聞いてろよ!!」

急に大声を出したトキオに、私は驚いて首をすくめる。

「彩花ちゃんのことは嫌いじゃないよ、むしろ好きだよ! ずっと俺のこと支えてくれたし、ずっと一人で頑張ってたんだ!」
「だ、だからよかったじゃないって言ってるのに」
「そうじゃないんだって! …ホントにちゃんと聞いてくれてたの!?」

トキオは再三、顔を大真面目にして口を開いた。

「彩花ちゃんのことは好きだよ。でもそういう、好きじゃないんだ」

「だって、俺はずっと前から、」

君のことが好きだったから。







You are My Dear!
(君の前では勇者じゃなくて、)
(王子様でいたいんだよねってことだよ)






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