※吹雪の近親相姦描写注意






「はぁ、は、あす、か、明日香…」

一人行為に勤しむ吹雪を冷えた目で見る。別段珍しくもなんともない、いつもの光景だ。吹雪は数日に一度、こうして私の目の前で自慰をする。頭の中のお相手は決まって吹雪本人の実妹であり、その欲情も、赤の他人同様、彼女に恋い焦がれる気持ちから来るものなのだ。
やがて絶頂を迎えた吹雪は緩く手を揺らして私を呼ぶ。誘われるがままに傍に寄れば、ふわりと抱き締められた。そのまま荒くキスされる。くちゅくちゅと口内を犯す吹雪の舌はその名前と反して、酷く熱い。これもその妹に向けられた思いであり、きっと吹雪は今、泣きたいと切実に思っているだろうと、思った。

妹に思いを寄せるだなんてことは本来あってはならない。それでも妹に耐えきれぬ熱情を抱いた吹雪が捌け口にと選んだのが、私だった。仲はよかったけど別段吹雪のことがそういう意味で好きだったわけではない。寂しかっただけ。


「彼」がどうしても私を真正面から見てくれないのはわかりきっていた。見込みのない片想い。そんなものに時間を費やすほど私だって暇ではない。だから吹雪の誘いに乗ったというだけ。


妹の名前を呼びながら果てる吹雪はいつ見ても滑稽だった。吹雪から見たら私も滑稽に生きているのかもしれない。でも、そんな私を利用しているのもまた、吹雪なのだから何を思われようがどうでもいいと思った。だから私だって吹雪が妹を想って腰を振ろうが果てようがどうでもいいと思う。私だってそうして、吹雪を利用しているのだ。傍からいい友人関係に見えているだろう。だってもともとはそうだったのだ。お互いに哀しい片思いをしていて、お互いに、吹雪が、吹雪から見たら私が、寂しさと苦しさから開放されるならそれでいいと思ったのだ。確かに、私たちはこうして共存している。それが本意ではなかったとしても、結果として私たちがこうしていることはお互いに了承したことなのだ。
抱き合ったまま私たちはキスを続ける。やがてゆっくりと私を押し倒す吹雪の胸板を私は軽く引き寄せた。

寂しい。寂しいだけなの。抱かれてる間くらい夢見たいの。「彼」に抱かれてるって思ってたいの。私は目を閉じて、吹雪の肩口に顔を埋めた。吹雪にとって私が、少しでも妹の代わりになれればいい。




「愛して、るよ」
「私も、すき」




呟かれた愛の言葉は偽りまみれで、それでも、その意味だけは本当だったのかもしれない。







偽りだらけのハッピーエンド






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