※後味悪いですご注意を
ここはどこだろう。
わたしはだれだろう。
そんなのはわかってる。わたしは私という人間の一個体で、ここは現実。
夢はもうさめてしまった。現実に立つ私は、現実を見て生きなければならない。
「目が、さめたのか」
どこからか男の声がした。ひどく懐かしいその声は、今は遠い場所から聞こえる気がした。
「お前はその世界に生きている」
「だから、その世界で生きなければならない」
「お前は、その世界で生きることが出来るのか」
ざあっ。強い風が吹いた。瞬間、開ける視界。色づく世界。見慣れた、いつもの、私の世界。
「私はお前のいるその世界に干渉することが出来ない」
「別次元に存在する世界には、私でも向かうことが出来ない」
「だから」
その言葉の先は言わなくてもわかっていた。
「…さよならね」
男は驚いたとでも言うように息をついた。
もうわかっていた。
この世界は現実という壁に包囲されているということ。私と彼の…いや、私の愛した彼らの世界とは深い隔たりがあるということ。そしてそれは、彼らが存在しないのと同義だということ。
「…ああ、さよならだ」
それが可能であるならば、私がお前を救ってやれる存在でありたかった。男はそう残して気配を消した。
そう。ここは現実。パラドックスはおろか、亮も吹雪も、もちろん優介も、平行時間軸の中で別の次元の私と過ごしてくれた彼らと、私を包んでくれた仲間たちも存在しない。所詮はゲーム、所詮は架空人物への愛なのだ。そしてその愛が報われないことを私は知っている。そして、あなたも。
幻想なんて、はじめからなかった。私の愛したあなたはいない。いないのよ。
そして迎える終焉