どうして君と僕はふたつなのかな
どうしてだろうねえ
おかげで、
うん?
こんなに近くにいるのに、ものすごく遠い
皮膚の隔たりがあるからねえ、仕方ない
じゃあ皮膚がなければ僕らはひとつになれるのかい?
さあねえ、試してみるかい
それがいい。ねえ、じっとしてて
絶対動かないでね、

はいはい、






シャキリ。

「うっわ、なにその人形。ナイフ本物じゃん。悪趣味」
「柚希こそ何なのそれ。ぜんっぜんかわいくないじゃん」
「あーあー、綿出ちゃったじゃん。信じられない」
「人形に愛着なんてないくせに。よく言うよ」
「気分の問題だろこれは。あーかわいそう」
「…」
「…」


「皮膚って、」
「ん?」
「皮膚って思ったより厚いんだな。人を個人と個人で分けるくらいの、権力を持ってる」
「何、どうしたの急に。柚希らしくもない、というかなんか気持ち悪い」
「失礼な奴だなほんとにお前は! ちょっと頭いいからって!」
「で、それが何」
「皮膚がある限りひとは孤独なんだなと、漠然と思って」
「そりゃあそうだよ。それが個体として生きるってことさ」
「…優介はそれでいいの」
「いいわけないだろ」


「『じゃあ皮膚がなければ僕らはひとつになれるのかい?』」
「少なくとも血液が私たちをひとつにしてくれる」
「…それもそうだ。柚希血液型なんだっけ」
「優介と同じだったはずだよ」
「そりゃあいいや」

「ねえ、じっとしてて。絶対動かないでね」
「はいはい」




ぐさり




マリオネットの憂鬱






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テーマ「人外ファンタジー」
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