気がついたら血にまみれて立っていた。手の中には黒ずんだナイフ。制服にこびりついた返り血。目の前には柚希。元々鋭い目をさらに鋭くさせて、柚希は俺を見ていた。柚希、何なんだこれ?どうなってるんだ?と、俺は聞いた。
「何言ってる、お前がやったんじゃないか」
柚希が何を言っているのかわからない。俺が、何をしたって?
「お前が殺したん
だ、亮も吹雪も、今さっきは利緒を」俺が殺、した? もう一度あたりを見渡す、見慣れた特待生寮、見慣れた顔の友人たち、俺の大事な友人、 吹雪、そして丸藤。学年こそ違えど、同じ寮で過ごした仲間たち。ナイフをもう一度見る。確かにそれは、俺のバタフライナイフだった。そうだ、ああ、俺がやったんだ。
「どうして、こんなことをしたんだ」
そう言った柚希の声はかすかに震えているようだった。俺に恐怖しているのか、それとも、他の何かなのか。いや、一般的に考えて前者だろう。あまりにも愚かなその質問に答えるべく、俺は口を開いた。
「お前がこいつらと仲良くするからだよ、柚希」
だってお前はいつだって俺には冷たかった、俺には無関心だった、俺のことは名前でなんて呼んでくれなかった。吹雪のことも丸藤のことも名前で呼ぶくせに、俺のことは呼ばなかった。調子にのっていた吹雪はへらへらと笑いながら「だって君はほら、人相も言葉遣いも悪いだろう?」と言った、俺より優位に立ったつもりだったんだろう、そうさ、いつだって吹雪のそういう態度は気に入らなかった、柚希に馴れ馴れしいところも、努力してるところなんて見せないところも、俺に出来ないことを平然とやってのけることも、全部。腹が立ったから殺した。ただそれだけ。動脈を掻き切って飛んだ血飛沫は時間経過とともに黒くなって、この有様。同じようにして他の奴らだって殺したよ、だってそうすればさ、柚希だって俺に優しくしてくれるかもしれないだろ?
「お前がこんなことするなんて、思いもしなかったよ、残念で仕方ない」
柚希は俺に近づいた。
「お前は頭も良かった、デュエルだって強かった。完璧だった、孤高の存在だと思って、ああ、そうだよ、私はお前を尊敬すらしてたのに」
近づいてきた柚希を抱きしめるべく両腕を広げる。やっと俺を見てくれる、俺だけの柚希になってくれる、
「尊敬してた、あこがれてたんだ、だから、」

「だから、苦手だったんだ」

急に間合いを詰めてきた柚希にナイフを奪われる。それを綺麗に回転させた柚希は、これもまた綺麗に俺の喉元を掻き切った。鮮血が、あふ、れ、る。
「ごめん、藤原」
視界があかく、そまっていく。
「お前のこと、すごく、嫌いだった」
あかだ。赤。くれない、いろ。
そう思ったとき俺は死んだ。柚希は自分の心臓を刺したあと、吹雪と丸藤の近くまで行ってから倒れた。ああ、結局俺は、また一人なのか。俺が幸せでいれる世界は、一体どこに行ったんだ。



選び損ねた、

未来と、愛と、友情と、自分の、





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