「今日っていう今日は我慢の限界だ!」
「は、ばっかみてえ。俺に勝てると思うならやってみろよ!」

両者から放たれる殺気。部屋に重い沈黙が降りる。

「今日という今日は許さない! デュエルだ!!」



結果の見えている勝負ほど悲惨なものはない。案の条優介のクリアーワールドにボコボコにされた柚希は、床に正座させられて優介にいびられていた。

「ほーら、言ってみろよ! オカルトなんて非科学的だって! こんなオカルトデッキ、好き好んでたどっかのバカも悪趣味極まりないなあ?」
「…っ」

喧嘩の原因はこれだった。オカルトなんて馬鹿げてるという優介と、獏良のファンである柚希はこうして衝突することも少なくなかった。お互いに爆発したのがついさっき、決着がついたのもついさっき、である。見え透いた挑発にのってしまった数分前の自分を殴りたい、と柚希は心底思った。

「…なんだよ、その目」
「…別に」

確かに柚希だって幽霊やその他の化け物が存在しているとは思いたくない。でもそれとこのM&Wは別物である。
ウィジャ盤はロマンだ。キラードールは可愛いんだ。私にそれを教えてくれた獏良さんは偉大な人だ。だからオカルトデッキと獏良さんを同時にけなすという罰ゲームは非常に厳しかった。

「柚希さー、ほんっとに往生際悪い。負けたんだから大人しく命令に従えよ」
「獏良さんを罵倒するなんて出来ない


むっとした顔で見下ろしてくる優介と、負けじと睨みをきかせる柚希。再来する一触即発ムード。やがて痺れをきらしたのか、優介は柚希と目線を合わせるようにあぐらをかいて座り、不機嫌そうな声で言い放った。

「大体さあ、なんでそんなに獏良の肩を持つんだよ」

何がいいんだよ? と尋ねる優介に、ふふん、とでも言いたげに柚希は言った。

「そんなの、優介には理解出来ないだろうね」

だから言わない。はっきりきっぱり、言い切った柚希を見て、優介は眉間に皺を寄せた。そのままの状態で、わざとらしく優介は溜息をつく。

「…なんだよ、その溜息」
「…いや、」

きっと柚希は俺よりも獏良の方が好きなんだろうと思って。耳元まで近づいてそう言った優介の目が淋しそうに見えて、おもわず柚希は動揺した。そんな柚希の反応を見て、内心優介はニヤリとする。かかった。

「あー…いや、別に…」

目に見えてオロオロとし始める柚希をじっと見つめる。勿論、目は捨てられた子犬のような目のままで。

「別に獏良さんは、その…憧れだから、好きとか、そういうのとは…ちが、う」

ゆっくりと口ごもりながら言った柚希はそのまま気まずそうに視線を彷徨わせた。そんな彼女に腕を伸ばして、抱きしめる。抱え込むようにして腕の中に閉じ込めて、演技終了。


「じゃあ、柚希の好きな奴は誰なんだよ?」

このまま腕の中の顔を覗き込めば顔を赤くした柚希が見れるのだろうけど、それはベッドの上までお預け。

「……ゆう、すけ」

勝ち誇ったように、尚且つ楽しそうに聞いてくる優介にハメられたと思いつつ、それでも名前を挙げてしまうあたり自分だってよっぽどどうかしていると思いながら、やっぱり柚希は数分前の自分に殺意を覚えたのだった。



Please say.
(はい、じゃあ言えたところでベッドにでも行こうか)
(ふざけんなぶっ殺すぞ)






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