「なんていうか…つまんないよな、ここ」
窓の外をぼんやりと眺めながら、柚希は突然そう言った。
「…俺といるのは退屈か?」
「あー、いや、そういうんじゃなくて。……おい、泣くなよ」
泣いてない、と言おうとしたが言葉が詰まった。柚希は呆れたように俺の目尻を拭うと、ソファの俺の隣に座った。
「この学校にいると、雪が見れないと思っただけだ」
手を頭の後ろにやって、ふうと溜息をつく。
「柚希の実家はよく雪が降るのか?」
「私のところ? 全然。たまに薄く積もるくらい。…亮のところは?」
「俺のところもだ」
しばらく2人してぼーっと窓の外を眺める。この島は太平洋の真ん中にある。雪など降るはずもない。それがわかっているから、きっと柚希も雪が見たいと思ったのだろう。
「柚希は、雪が見たいのか」
返事はすぐに返ってこなかった。どうしたのかと横を見れば、考えあぐねているような彼女の顔が見えた。
「…見たくないのか?」
顔を覗き込めば、少し不機嫌そうに見たいよ、と返された。
「亮はスキーできる?」
「やったことがない」
そう答えれば、意外だという顔をされた。
「まあ、なんてったってカイザー様だしなあ…多分亮なら出来ちゃうだろうね」
遠いところを見ている、と思った。
このデュエルアカデミアにいる限り、俺たちは雪を見ることができない。だけど、卒業してしまったなら、俺たちが一緒に雪を見ることの出来る確率はとても少なくなってしまう。
「柚希」
「なに」
「卒業したら、スキーに行こう」
窓の外に投げられていた視線が俺に向く。
「…私、KCの教育課入るつもりなんだけど」
また寮暮らしだからなかなか会えないよ、と言う柚希の肩をそっと抱きしめる。
「休みくらいとれるだろう」
「でも亮だってプロになるって言ってただろう。きっと忙しい」
「そんなの、合わせればいい」
簡単に言うなよな、と文句を言った柚希も、俺の肩に体重を預ける。
「…約束だけなら、しておいてやるよ」
「わかりにくいな。一緒に行く意思があると言えばいいだろう」
そういうところは素直じゃない、と言えばうるさいとつつかれた。
多分、彼女なりの照れ隠し。
瞳にうつる