いらっしゃいませー、と軽やかな声が私を出迎える。照明の明るい店内、綺麗に染色された髪の美容師さん。カウンターで最新のDMを出せば、対応していた美容師さんがどこか納得したような、何か気づいたような態度でそれを受け取った。

「あの…無料って聞いたんですけど」
「ええ、勿論です! ただいまオーナーを呼んで参りますので、少々お待ちください」
「え、いや、あの…!」

カウンターの前で、一人ぽつんと取り残される。たかが優待券を出した客にわざわざオーナーが出てくるものだろうか?どこか申し訳ないモヤモヤとした気持ちを抱きつつ、やっぱり無視すればよかったと後悔し始めた頃、


「いらっしゃいませ。お待ちしておりましたよ」


まるで、青空が声をかけてきたかのような、そんな錯覚を覚えるまでに透き通った声が、私の名前を呼んだ。

「なかなか来てくれないから、どうしようかと思いましたよ。直接お宅に伺ってお連れしようかと思ったくらいです」
「ああそれはごめんなさ…えっ? はい?」
「お待たせして申し訳ございません。こちらへどうぞ」
「あ……はい」

何かおかしなことが聞こえた気がするが、気のせいだろう。疲れもあるし。

「そうだ。わたくし、当店のオーナーで折原臨也と申します」

そしてその透き通った声で、DMに印刷された綺麗な顔で、彼、オリハライザヤは笑った。




「…ヘアサロン、オリハラへようこそ」





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