例の美容院からまたDMが届いていた。無料優待券、と上品そうな書体で書かれたそれをぼんやりと眺めながら、自分の髪の毛先を触る。明らかにゴワついたそれの手触りを感じながら、はあと溜息をつく。

仕事ばかりの毎日だ。ばかり、というと語弊があるかもしれない。それなりに休みもあるが、どうも気が休まらない気がしている。出てきたばかりの都会、慣れない仕事、休まらない日常。先日からよく届くようになったこの美容院からのDMを見ていると、どうも行ってみたくなる。

「…無料優待券、だもんね」

あまり遠くないし。呟いた独り言が狭い部屋の中に霧散した。



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