White 4 








静雄は気まずそうに、灰色の空を睨んでいた。
その顔は、ほんのり赤みを帯びている。

臨也は肩で呼吸をしながら、ゆっくりと静雄に歩み寄った。


「シズちゃん、やっぱりここに居たんだね」

「……まぁな」

「本当は、覚えてたんでしょ。今日が…記念日だって」

臨也は優しく問い掛ける。静雄はそれに応えるように、こくりと素直に頷いた。
臨也はそれを見て、安堵のため息を吐き出す。

本当に忘れていたわけでは無かったんだ。先程まで胸の中で渦巻いていた不安や焦りが一気に散ってゆく。
新羅の言葉が頭を過ぎる。
そうだ、解りきっていたことじゃないか。静雄は元より感情表現が苦手で、上手く気持ちを言葉や行動に表すことができない。
ならば愛情表現なんて、上手くできるはずがないのだ。

それなのに自分は、勝手に不安になって1人で悩んで、本当に馬鹿みたいだ。
『愛』を言葉で示してほしい、なんて。そんな女々しいことを思っていた自分に苦笑が零れる。

静雄のとなりに、臨也も同じようにフェンスにもたれ架かった。
まだ少し冬の気配の残る北風が2人の間を吹き抜ける。臨也は思わず身震いをした。

「シズちゃん、手冷たくない?」

「…冷たい」

「そう。俺も冷たい」

静雄は、何故そんなことを聞くのだろうとでも言いたげに小首を傾げて臨也を見た。

「でもこうすれば暖かいよね」

臨也は強引に静雄の手を取ると、指を絡めて手を繋いだ。いわゆる恋人繋ぎ。
静雄は一気に顔を真っ赤にさせた。思い切り顔をしかめて舌打ちをしたけれど、それを振りほどいたりはしなかった。ぎゅう、と握り返す。

「……なんだ?」

静雄は眉を寄せて、繋がれた手を見る。密着しているはずの2つの手の間に、異物感を感じた。

「気になるなら見てみれば?」

臨也はその正体を知っているようで、にやりと笑いながら繋がれた手を静雄の前に差し出した。
ゆっくりと指を解いて、中から出てきたのは――


「…なんだよ、コレ…」

静雄は、手の間から出てきたそれを見て、今度は耳まで真っ赤にさせた。

シンプルなデザインの銀のリング。よく見ると、臨也の指には同じものがはめられていた。

「バレンタインのお返し。それ、俺とお揃いだからなくさないように」

臨也は静雄の手を取ると、左手の薬指にそれをはめた。まるで結婚式の誓いの儀式のようだ。

「お前…これ、恥ずかしくねぇのか」

「全然。むしろ、みんなに見せびらかしたいね」

「間違ってもそんな真似ぜってぇすんなよ…」

冗談だよ、と臨也が笑うと、静雄も照れ臭そうに笑った。まじまじと指輪を眺める姿に、臨也の胸は暖かいもので満たされてゆく。


いつの間にか差し込んでいた柔らかな日差しが2人を包み込んだ。辺りは一気に春特有の幸せな温もりに満ち溢れた。
もう冷たくないはずの掌は繋がれたまま、2つの銀色がきらりと輝いていた。







**
おお終わったああ!!
遅くなりすぎてごめんなさい;
やっぱりシズちゃんは
ツンデレなんですって話です 笑
また企画たててリレー小説
やりたいですv

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