Valentine 3 沈黙はどれだけ続いただろうか。ほんの数秒だったかもしれないが、静雄には何分にも思えた。 それほど、臨也の一言は衝撃的すぎて。 静雄は、返す言葉が見つからずその場に立ち尽くす。じわじわと頬に熱が集中する。だがそれを隠すことも、この場を逃げ出すこともできない。 これが、最後のチャンスになるかもしれないのだから。 「……ねぇ、シズちゃん」 沈黙に耐え切れず、臨也がじれったそうに口を開いた。 口許はいつものように笑みを貼付けている。 けれどその笑みは『笑顔』には程遠く、苛立ちの色がかすかに滲んでいた。 静雄は驚いて目を見開く。 滅多に感情を表に出さないコイツが、感情を抑え切れずにいる。 ただそれだけのことだが、静雄を硬直させるには十分なことだった。 「新羅から、聞いたんだ。誰かにチョコあげるんだって?はは、化け物のクセに、意外と可愛いことするんだねぇ」 「……っ!」 カシャン、とフェンスの軋む音がした。臨也が言葉を紡ぎながらこちらへ近付いてくる。 ヘラヘラといつものように笑いながら、真っ直ぐに静雄を見つめたまま、苛立ちを隠せないまま、じわりじわり。 静雄の目の前までやってきて、ピタリと止まった。 「ねぇ、誰を好きになったの?同じクラスの子?名前は?もしかして先輩?シズちゃん、年上好きだからねぇ。ああもしかして、先生かい?保健室の先生なら、綺麗だし優しいし、シズちゃんにはぴったりだよねぇ!」 臨也は息継ぎもせずに言い切った。 酸素が足りないのか、肩を少し上下させている。 顔は俯いていて、表情が読めない。 ただ、いつものあの嫌味たらしいノミ蟲ではないことだけ確かだった。 「いざや、違う、違う…」 「何が?何が違うの?好きな人がいるんでしょ、この学校に」 「そう、だけど…!」 「じゃあ違わないよ。相手が誰だって大差ない…!」 「臨也…?何を言ってるんだ…?」 「…3年間、俺は毎日毎日シズちゃんと殺し合いをしてきたよ。シズちゃんが…俺のことしか考えられないように…!」 臨也は、両手で弱々しく静雄の肩を掴んだ。その手は少しだけ震えていた。 ようやく、臨也が顔を上げた。 そこにあったのは、泣きそうに瞳を揺らす臨也の顔だった。 「なのに…それなのに、どこに違う人のことを考える余裕があったんだよ…!」 「いざ――」 や、と呼ぼうとしたとき、臨也は正面から静雄を抱きしめた。強く強く、感覚を確かめるように。 「好きだよ、シズちゃん」 耳元から、臨也の掠れた声が聞こえた。 → next.liz ** あー、言っちゃった!笑 私の書く臨也くんは どうしてもベラベラ喋りますw さぁここから頼みますよ! 思い切りハピエンに してあげてください^^ |