おはなし | ナノ




『好きだよ』









胸の左側がどくどくと煩い。
まるで、早く心を開いてしまえと急かされているみたいだ。

それにつられるように、顔がだんだん熱くなる。
頬が、耳が、じわじわと熱を帯びてゆく。
それはどうしても隠せなくて、目の前の男に心の内をさらけ出しているみたいだった。臨也は、嬉しそうに顔を綻ばせる
。そこに、いつもの嫌みな笑顔はなかった。

「で、返事聞かせてもらえる?」

「…しるか」

「俺はちゃんと言ったよ。シズちゃんは、どうなの?」

「……っ」

「……好きだよ、シズちゃん」

臨也の言葉は嘘ではない。揺るぎない赤い瞳がそれを保証していた。
だからこそ、静雄は余計に混乱していた。いつものふざけたあいつなら、手加減無しにぶっ飛ばしてやることができたのに。

静雄も本当は分かっていた。この男に対する想いに、殺意ではない生温いものが混ざっていたことを。
けれど認めたくなくてずっと気付かないフリをしてきた。認めてしまえば何か変わってしまう気がして。

それが今、この男を、大嫌いなはずのこの男を目の前にして、想いが溢れ出す。
ああ、自分に嘘はつけない。

「…どうしても、言わなきゃダメか?」

「駄目。」

「………だ、」

「だ?」

「………大嫌い」

「シズちゃん…」

真っ赤になりながら吐き出した言葉は、説得力を持たずに臨也に届いた。
臨也は苦笑を零して、静雄の手を握った。

「俺も、だいっきらいだ」

2人の手は少しだけ震えていた。
互いを傷つけ合った手は、今、ぬくもりを確かに感じ合っている。





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青い感じを目指しました!笑
シズちゃんの大嫌いは大好きの意です←


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