デートのおさそい |
静かな部屋に、紙の擦れる音が響く。大きな窓のある事務所のような造りの部屋には、2人の男がいた。 「お前もファッション誌とか読むのな」 パラパラとページをめくる臨也を見下ろしながら、静雄は不思議そうに言う。 「なに?その意外そうな言い方」 「だって手前が黒以外の服着てんの見たことねぇもん」 確かに、そう言われてみればそうかもしれない。 プライベートで池袋に行くことは滅多にないため、静雄に会う(出くわす?)ときはいつも同じかっこうだ。 「俺だって黒以外にも着るよ。プライベートでしか着ないだけで」 「…そうか」 静雄はそう言うと、ふらりと臨也のもとを離れてしまった。心なしか少し寂しそうにも見える。 臨也ははっとした。 そういえば、付き合っているにも関わらず、今まで私服を着て2人で待ち合わせて遊びに行くという、恋人らしいことをしたことがなかったのだ。 「シズちゃん、」 「…なんだ」 「今度デートしよう」 「は?」 静雄は驚いたように勢いよく振り返り、眉間にシワを寄せた。 表情は険しいが、少し頬が赤くなっている。 臨也は、その表情の意味を知っていた。 「プライベートの俺を見せてあげるよ」 「なにきもいこと言ってんだ」 静雄は、恥ずかしいのかそっぽを向いて、スタスタと部屋から出ていってしまった。 1人残された部屋で、臨也は小さくガッツポーズをした。 ** 自然な流れで初デートにこぎつけた 臨也のおはなしでした!笑 |