そしてわたしはくるりと姿勢を正す。


「山本先生」
「はい」
「わたし、何とかこの学園でやっていけそうです。食堂のおばちゃんも先生も、皆さん優しい方ばかりです」
「それはよかった」


山本先生はわたしの肩に手を置くと、よしよしするように撫でた。あたたかくて優しい手の平は出会った日と同じで、わたしはやっぱり安心する。


「早く帰れるように、今は皆さんの迷惑にならないようがんばります。でもきっと、辛くなる時もくると思います。その時は、あの、先生に会いにきてもいいですか?」


よくも知らない相手にこんな事を言うなんて、現代だったらありえない事だと頭を疑う。実際、普通の世界にいるわたしだったらこんな事思いもしないだろう。
だけど、ここは現代じゃない。
わたし一人ぼっちの室町時代。
まだ人との触れ合いが隣り合わせな、あたたかい時代。
少しくらい甘えてもいいかなあ。

そんな思いも、全部ぜんぶ知ってるみたいに山本先生はにっこり笑うと、ぎゅっとわたしを抱きしめた。


「勿論ですよ」


きっと少し泣いた。





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